わたしにとって列車はずっと長いあいだ、目的地へ行くための道具にすぎませんでした。ところが半年ほど前から、二歳になる息子といっしょにホームでおにぎりを食べ、踏切にたたずみ、電車図鑑を熟読するうちに、ふと気づけば、いっちょまえに新型車両批評をし、公園のミニSLに感激するように…。 最初は「鉄道オタクにはなってほしくないね」とか言ってたくせに、いまでは、子供さえいなければジオラマを作るのに、なんて考えてる始末です。鉄道ファンのみなさん、いままでごめんなさい。 この本に取り上げられている列車はヨーロッパの主な特急13タイプ。紺色と山吹色がまぶしいユーロスター、言わずと知れたTGV、ユーモラスなペンドリーノ、ピレネー越えの元気なタルゴ、格調高いオリエント急行などなど。こうしてヨーロッパの列車を見てみると、日本の列車が伝統で負けているのは当然のこととして、もっと悲しいのは、走るところがないという現実です。新幹線が時速300キロだのなんだのといっても、それだけのスピードで走れる直線はほんのわずか。色が無難な白や寒色系におさまりがちなのもそのせいでしょうが、人家の見えない田園をバックになんてのも夢のまた夢。もっともそれは特急の話で、とことこと行く小さな電車には山肌と田んぼこそが似合っているのですが。 とりあえず手近の電車ウォッチングを楽しんでいる身としては、次は「ヨーロッパのローカル線」なんていうのが見たいです。「地下鉄大全」や「古都の路面電車集」なんていうのもいいですね。
「ヨーロッパ鉄道夢紀行・ユーロスターからオリエント急行まで」 |