ヤンヌ・ピア暗殺疑惑

 1994年2月25日、南仏のイエール市で、帰宅途中、 2人のオートバイ運転手に射殺されたヤンヌ・ピア代議員(UDF) 暗殺事件に迫るカナール・アンシェネ紙のルジョ、ヴェルヌ記者。彼らの著書「ヤンヌ・ピア疑惑:首謀者は政治家の中に」は、情報提供者”将軍” の話を元に、「射殺現場にはもう一組の射殺者がいた」とし、元軍用地の売却に関係したとみられる元大臣2人を、 “イカ”(Encornet)と”スクーター”(Trottinette)という異名でピア暗殺首謀者に仕立てた推理暴露小説。
 本が発行されるや、元国防相レオタール仏民主連合(UDF)総裁は「イカとは私のことではないか!」、 ゴダン・マルセイユ市長(UDF) も「スクーターとは私のこととしか考えられない!」と、誹謗、デッチ上げだと激怒し、名誉毀損で両著者とフラマリオン社を訴える(*)。 それだけでは気がすまないレオタール氏は、超スピードで「Pour l’Honneur(信義のために)」を書き上げ(グラッセ社)、反撃にまわる。
 ところが、実在人物かどうかで軍 内部でも騒がれた”将軍”は、じつは元エレクトロニクス技師ジョジョン氏(60)と分かる。彼の家には友人・知人がよく集まり、話題は地元の政界からマフィア にまでおよぶ。ルジョ記者はその集まりに出席し、彼らの話を録音していたらしい。ジョジョン氏は91年、詐欺罪で8カ月の実刑を受けたが、妄想症と多発性硬化症のため服役を免除される。本人は、情報提供者であることを否定し、フラマリオン社とルジョ夫人が、彼に”将軍” 役を引き受けさせるため金を掴ませ脅したと、両者を訴えている。
 ルジョ記者らが真相をつきとめようとしたのは、ピア暗殺事件だけではない。同事件より2カ月半後の5月12日、サンスネ兄弟が自宅のガレージで車中に排気管を引き込み、安全ベルトをしたまま一酸化炭素中毒死したとされる。が、シャツに血痕が…。 2人とも睡眠薬を摂取していた。兄フェルナン氏(52)はプロヴァンス地方議会補助員で、地元名士や政治家とも親交が深く、彼らの資金源にも通じていた。政界の裏を知りすぎていたサンスネ兄弟の死ははたして自殺だったのか? ピア暗殺事件とのつながりは ? 
 ピア射殺事件の逮捕者は6人。彼らはイエール市のバ ー・マカマに出入りする一団のメンバーたち。マフィア対策委員だった故ピア代議員が、彼らにとってじゃま者だったのは明らかだ。
マカマの支配人フィナル(40)がピア射殺首謀者として調査が行われている。   
 一方、レオタール氏はシラク内閣の国防相時代には孤立無援、RPR党議員からは白眼視され、南仏では保守2党(UDF/RPR) 近親憎悪の渦に巻きこまれている。 「人を汚すことのみを目的とする諜報網を持つ国家を恥じる…秘密警察国家なのか?」と、レオタール氏は「ピア疑惑」をとおして派閥による裏工作(?)を糾弾する。
 南仏の太陽の下でトグロを巻くマフィアと政界の関係ほど複雑怪奇なものはなさそうだ。     (君)
      
*両著者はレオタール、ゴダン両氏を事件首謀者とする証拠を提出できず、10/28日パリ民事裁は著者と出版社に、問題の箇所15頁の削除と、レ氏に1万フランの損害賠償金支払い命令の仮処分。出版社は販売中止を決定。

 

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