ビズタージュ

 ビズタージュを受けたことある? と大学生やOBに聞くと、ニンマリし、グランド・ゼコールやエリート校出身の誇りと一種の懐かしさを顔に出すビズタージュ体験組と、そうした儀式のない一般大学出の、自分には関係ないといった二種の反応に出くわす。
 ビズタージュ (bizutage) の語源はスペイン語の bisogne(新兵)。 1843年に初めてサン・シール陸軍学校で bizut という言葉が使われ、19世紀後半にエコール・ポリテクニックで新入生いじめの儀式となって定着。今でもいちばんその伝統を守っているのが国立工芸院 (Ecole nationale supérieure des Arts et Metiers) で、 Gadz’artsと呼ばれるOBたちが強力な圧力団体を形成している。80年代以降は下火になったといわれるが、最近は風俗化し、高等専門学校や医学部、グランド・ゼコール準備学級やエリート高校の寮生の間にも広がっている。
 1、 2週間続くビズタージュの代表的なものは、新入生の顔や体に小麦粉やシェービングクリームを塗りつける、新兵もどきの屈伸運動、下着姿で街を歩かせられる、何が入っているか分らないスープを飲ませられる、女子学生はビズターの前でストリップをさせられたり男子のズボンのジッパーからのぞくバナナをなめさせられるなど、低劣で屈辱的な行為を強要するものが多い。ベルサイユのグランド・ゼコール準備学級にいた女学生がその屈辱的な体験を一冊の本*にまとめている。 ビズタージュへの参加は自由となっているが、不参加者は学生協が管理する講義プリントももらえず、カフェテリアにも入れず村八分に。ビズタージュは、上級生と新入生との融合・連帯、厳しい学業への入門の儀式の役を果たしているとみる支持派は70%。が、集団行動による行き過ぎはサディズムにもつながり、思わぬ事故と精神的後遺症となる場合も多い。
 最近の例を見るなら、 9月11日マルセイユの高校の獣医学部準備学級で新学期初日、新入生は下着姿で街を歩いた後、海水を浴び裸に近い姿で密室に導かれ、ヴァイブレーターをフェラチオする場面をビデオで撮影される。そして“ミス・オッパイ”を選出後、ドッグフードとシェービングクリームを混ぜたペーストの中を転げまわらされる。陰湿ないじめにも通じるこのビズタージュを目撃した一人の市民が、ビズタージュ反対市民団体に訴え、文部省にも働きかけている。
 もう一件は、 9月17日オルレアンの高校の寮で柔道部の一人が、新入生に「月曜までに恥毛を剃れ」と命令。もう一人はある新入生に「服の上から尻の穴にペンを差し込もうとした」事件で、二人とも退学処分に。
国会へ新たなビズタージュ取締り法案の提出を急ぐセゴレーヌ・ロワイヤル学校教育担当副大臣は、現地に乗り込み、生徒・教師らに「人間の尊厳を侵害するビズタージュへの沈黙をいまこそ破るべき」と警告する。
 しかし、どうしてビズタージュがエリート校で行われるのか。個人主義も個人の尊厳も無視できる“結社的”な優越感がそうさせるのだろうか。(君)

* Bizut. De l’humiliation dans les grandes écoles.
(Aude Wacziarg. Editions Austral)
* 9/22日よりSOS Bizutage (0800 55 55 00) 開設。


 

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