トリカスタンの第1原子炉、初の10年運転延長許可を得る。
原子力安全庁(ASN)がドローム県トリカスタン原子力発電所の第1原子炉の10年運転延長許可を8月10日に公表したと、仏紙が22日に一斉に報じた。フランスの稼働原子炉56基のうち、延長が予定されている原子炉32基のなかで、初めての延長認可だ。
フランスでは原子炉の運転期間の上限は法律で規定されていないが、40年の運転を想定して建設されており、10年毎に点検されて次の10年の運転が可能になる。特に運転開始後40年の点検は最新の原子炉と同じレベルの安全性を目指して行うそうで、トリカスタン第1原子炉の点検は2019年に始まった。1978~87年に運転を開始した容量900MWの原子炉32基が40年点検の対象になっており、そのうち11基が点検を終了し、トリカスタン第1原子炉に続くASNの延長許可待ちの状態だ。40年を超える点検のためには、従来の安全性基準に加えて、新たに地震や猛暑のリスクへの耐性が審査されるという。猛暑耐性は45.7℃の気温に12時間まで耐えられること、14日間のうちに45.7℃と28.1℃の温度差に耐えられることが審査される。
ル・モンド紙電子版6月15日の報道によると、ASNは同14日に公表した文書のなかで、原子炉の一次回路の管の耐性が、延長点検中の5つの原子炉で不十分であり、高放射能ゾーンにあるために交換が困難であるとした。さらに、2019年にアルデッシュ県でマグニチュード5の地震が起きたが、建設時には地震リスクが考慮されておらず、これを考慮に入れると4基の延長に困難が生じる可能性があるとしている。その他にも取り換え不可能な原子炉格納容器が60年の耐久性があるか否かは定かではなく、そうでない場合は大規模な工事が必要になるとしている。こうしたことから、全原子炉を60年まで延長することは容易ではないように思える。
ウクライナ戦争の影響によるエネルギー危機、2050年にカーボンニュートラルにするEUの方針を受けて、マクロン大統領は新たな欧州加圧水型炉(EPR)が完成するまでの間、可能な限り多くの原子炉を60年かそれ以上まで運転を延長する方針を表明している。原子炉の運転延長のための修復・整備には660億€の予算が充てられる。ちなみに改良型EPR2の6基建設には517億€の予算が充てられ、2035年までに完成予定だ。
オランド政権時に総電力生産に対する原発の割合を2025年までに50%に下げる政策から、一転して原発を推進するマクロン大統領。しかし、現実には運転延長や、フラマンヴィルのEPRの大幅な遅れのようにEPR建設にも不安材料があることは否めないだろう。(し)