
「年金改革:出口はどこに?」1月10日付ル・パリジャン紙
12月5日から始まった年金制度改革反対のストとデモが依然として続いている。1995年の3週間を優に超えて2ヵ月目に入った。仏国鉄(SNCF)やパリ交通公団(RATP)のスト参加率は低下したものの、列車やメトロはまだ大幅に間引き運転されており、商店、飲食業、文化施設にも大きな影響が出ている。年が明けて政府・労組交渉の第2ラウンドが始まった。
改革全面撤回を求める労組CGT、FO、FSUなどのほか、弁護士、医療関係者、公務員、教員らも抗議行動を続行しており、デモも12月17日の全国61.5万人(CGTは180万人と発表)をピークに断続的に続く。政府は新制度スタートを2025年から2027年に後退させたほか、警官、SNCF、RATP、パイロットらに対し、段階的導入、早期定年年齢、独自の付加年金制度維持など種々の例外措置を相次いで認めた。しかし、現行42ある年金制度の一本化、ポイント制、年金制度の赤字解消という改革の原則は崩していない。注目されたマクロン大統領の大晦日の演説も、これまでの改革遂行の決意を繰り返すにとどまった。
全面撤回を求めるCGTなどの労組は別にして、最大の争点は、制度一本化とポイント制に賛成する改革派労組CFDTすら反対する、満額受給資格を64歳にする点だろう。仕事の「苦痛度」に応じて64歳という年齢を前倒しにできる譲歩策を政府は模索しているようだが、「苦痛度」の条件が明確でないことに労組側は警戒感を示している。現行制度に比べ、早くに就職した人が不利になるのは納得しにくい点だ。また、世界一の米資産運用会社「ブラックロック」の仏社長がレジオンドヌール勲章を受章したことから別の疑念も浮上。年金制度改革で保険料支払対象が月給2.7万€から1万€に下がって高額所得者の年金額が減ることから、ブラックロックが扱うような年金貯蓄商品の需要が高まり、公的年金というフランスの制度に貯蓄型民間年金が参入するのを政府が促進しているという疑念だ。
最近の世論調査では、単一制度とポイント制に賛成する人が65%と54%、満額受給64歳は反対が66%。スト・デモを支持する人は46%と、世論はまさに二分。政府の言うポイントの価値があいまいなことも国民の猜疑心を煽る。政府がさらに譲歩をしない限り、今後もストやデモは続きそうだ。24日に法案の閣議提出、2月中旬に国会審議というスケジュールが果たして予定通りに行くのか、予断を許さない状況だ。(し)
