キャンバス、それは街そのもの。
街を歩きながら、建物の壁の高いところにドット絵の宇宙人を見ることはないだろうか。モザイクタイルを使って日本のレトロゲームのキャラクターを中心に描く、その名もInvader (インベーダー) は、フランス人アーティスト。世界中のストリートを活動の場とし、作品総数は1700点を超えるという。
20年前から今も現役で活動している彼を筆頭に、パリは今や、アーティストが主張の場を取り合う激戦区である。壁やトラック、シャッター、街のいたる所に見られるこれらの作品は、そもそも誰がどういう目的で残したものなのだろうか。どこからが芸術で、どこからが悪戯(いたずら)なのか線引きが難しく、ルールも秩序もないように見えるこの〈文化〉だが、近年では市民権を得て、パリでは市から許可されたゾーンに、世界のアーティストが残した作品を見ることもできる。
1970年代、自分の存在や主張のマーキングとして、名前を縄張り的にタギングするグラフィティがニューヨークの若者の間で流行し、その後、縄張り主義とは違う形でアート性を強くしてきた、ストリート・アート。その歴史や多様性を少し知った上で、街という大きな美術館にアーティストたちが残した痕跡に注目してみると、また違った街歩きの楽しみが発見できるかもしれない。(佐)
取材・文・写真:佐藤 マーク