Q:若い頃から開業を考えていたんですか?
高橋:人に使われるの、嫌じゃないですか(笑)? 35歳までに独立して人に使われるのを終わりしないと、と思っていました。偉くなったって、誰かに使われていたら自由人じゃないですから。仕事をするって忙しいからそこまでの自由はないですが、自分たちで休みたい時に休めるし、自分たちがいいと思った日にお店を閉めることができます。
Q:それができる高橋さんが羨ましいです。
高橋:楽じゃないですか? 多分この考えの方が。みんな楽だと思っているかもしれませんが、誰もしないので。みんなが本当はしたいと思っていることを、やっている。人と違うことをしているんだろうな、とは思っています。同業者からも「お前よく休むな」って言われますよ(笑)。
Q:最後に、料理している時ってどういう時が楽しいですか?
高橋:丸々火を通して、切った時に完璧な火入れだと嬉しいですね。今って色々な料理方法があって。例えば、真空調理って嫌いなんです。大人数へ料理を出すなら、仕上がりが均等なので良いかもしれませんが、料理人ってやっぱりフライパンの上で焼いてなんぼだと思うんです。包丁一本、フライパン一枚みたいな(笑)。だからオーブンも使いません。その方が、塩加減も外がしっかりしていて、中まで入ってはいないけど、仕上がりにグラデーションが出る。外がカリッとしているけど、中はジューシーな感じに仕上がっている。真空調理をすると、全体が60度。そうすると、高級なハムにしかならない。どこを食べても同じ。温度帯も同じ。フライパンの方が料理人らしい。
Q:なるほど、料理人の技量が問われますよね。
高橋:星付きのレストランで食べたこともありますが、高い料金を払って真空調理のご飯は食べたくないですね。その場で焼くから出る味っていうのが必ずあるはずです。肉を入れて、タイムを入れて、バターを入れて香りが移ってゆっくりサイドを焼いて。温度が上がって、メイラード反応が起きて焦げが出て香ばしさが出て。色々なプロセスを経るから“美味しい”のに。真空調理も美味しいと思うんです。しっとりしていて。でも、高級なフランチャイズみたい。自分というのがない。
Q:毎回うまく仕上げる難しさもあると思います。
高橋:失敗もしますけどね。だから日々こう変えようって思うじゃないですか。でも真空調理に“日々”はないですから。80度、84度で芯温が60度になったらあげるというのは、誰がやってもできること。料理と真剣に向かい合わないと、自分も楽しくなくなってくる。毎回火加減をあぁだろう、こうだろう、と向き合わなくなっちゃう。
Q:やっぱり料理が好きなんですね。
高橋:自分で作ったリゾットを食べてうまいなぁと思ったり、今日の鴨も完璧だったし。あぁこれはうまいだろうなって思って出しています。あとは、お客さんが食べたお皿に何も残っていなかったら、よかったかな、って思うだけで。この仕事、大変ですけど、「美味しかったよ」の一言で終わっちゃう一瞬の花火みたいなものです。準備は大変ですが、まぁそれでいいのかな、と思っています。料理が好きで料理人になったので、料理が嫌いになるようなことはしたくないんです。長期労働でストレスの中で働いていると、やっぱり仕事が嫌いになるじゃないですか。そういうことをなくして60歳まで楽しく料理をしていくために、ストレスを外していく。それだけかな。あまり料理人らしくない、料理人かもしれません。
Restaurant So
Adresse : 15 rue Amiral Roussin , 21000 DijonTEL : 03.8030.0385
アクセス : M° Ranelagh
URL : www.n41.fr
火〜土 12-14h/19h30-21h30 昼メニュー:15€と18€ 夜メニュー:23€と35€