シリア北部のラッカが10月に陥落し、イスラム国(IS)が事実上支配地域を失ったことを受け、残留しているフランス人戦闘員の問題が浮上している。未成年者500人を含む仏人約1200人がシリアとイラクに残っているとみられ、現地で拘束されるケースも出ており、政府は対応を迫られている。
フランス国営放送は11月、ラッカでクルド人勢力に拘束された仏人女性マルゴのインタビューを放送。イスラム国の空言に「だまされて」合流したとし、3人の子供だけでもフランスに送還したいと仏政府に訴えた。
ル・モンド紙は12月3-4日付け「仏人ジハーディスト、高リスクの帰国」との見出しで、クルド勢力やイラク当局などに成人10人とその子供が拘束されていること、残留している約1200人の大半は、シリアやイラク、近隣国に潜伏しているなどの現状を報じた。
仏政府は、公式にはこれらの仏人が拘束された場合は介入せず、現地で裁かれるべきとしているが、実態は複雑だ。シリアでは、クルド人勢力が仏人戦闘員を捕らえているケースが多いが、国家ではなく正式な司法制度は持っていないため、国際法上は仏人を拘束したり裁くことはできない。仏政府が自国民の引き渡しを求めた場合、クルド人のシリアでの政治的地位確立の後ろ盾となることが交換条件にされると予想される。
また、子供が戦闘員になった両親は、政府の介入を訴える。娘が数年前ISに合流した女性はル・モンド紙に「シリアにいる娘の夫から子供たちを救いたいと連絡があった。外務省に相談したところクルド人勢力に投降するよう勧められ、従った。家族全員拘束されたが、環境が劣悪で孫が健康を害している」と話し、政府の支援を求めている。
未成年者の保護も大きな課題だ。イラク当局に拘束された子供は、送還に向け手続きが進められているが、クルド人勢力に拘束された子供たちに関しては見通しが立っていない。マクロン大統領は先月、一部の未成年者は現地で裁きを受けるべきと表明した。ISのプロパガンダ映像では、仏人の子供戦闘員が人質を銃殺するシーンが撮影されている。
帰国した場合も、その後の「フォロー」は難しい。同紙によると、すでに帰国した成人244人のうち134人は収監され、残りは司法監視下にある。未成年者59人は、里親家庭などで育っているが精神疾患の症状が目立ち、長期的なケアが必要。今後帰国者が増加すれば、政府の負担はさらに重くなる。(重)