大統領選挙の第1回投票が4月23日に投開票され、「En marche!(進め!)」のマクロン候補が24.01%、国民戦線党(FN)のルペン候補が21.30%の得票率で決戦投票に駒を進めた。次いで共和党のフィヨン候補(19.94%)、「屈しないフランス」のメランション候補(19.62%)、社会党のアモン候補はわずか6.35%。直前の世論調査をほぼそのまま反映した結果となった。投票率は78%。
4人の候補が20%前後でほぼ並んだことと、右派共和党と左派社会党というフランスの伝統的な2大政党が共倒れになり、政治基盤のないマクロン候補と極右のFNが頭一つ抜け出て決戦投票に進んだのは、まさに前代未聞。大胆な福祉政策や労働者保護策を唱えて、直前まで決戦投票進出かといわれたメランション候補も、2大政党から大きく外れた存在だ。
オランド政権の史上稀にみる不人気により、順当に行けば当選確実とみられたフィヨン候補は架空雇用疑惑で沈没。敗北宣言で「この敗北は私だけの責任だ」と彼自身が言ったように、出馬に固執した彼の責任は大きい。既存の2大政党に背を向けた有権者は、アンチシステムを掲げる極右と極左に流れるか、EUからの離脱や極端を嫌う人はまったく未知とも言える若いマクロン候補に期待を「賭けた」。
極右とマクロン候補という正反対の方向にフランスは二分された。本土13地域圏のうち、マクロンがトップに立ったのは西部、中東部、パリ首都圏の5つ、ルペン候補のほうは北部、東部、南部の8つだ。FNは2014年欧州議会選挙では470万票(25%)、15年の地域圏議会選第1回投票では600万票(28%)、今回の選挙では760万票と確実に票を伸ばしており、次の決戦投票で敗れたとしても、6月の総選挙で地盤固めをして、5年後の大統領選で悲願を果たせないという保証はない。
決戦投票は世論調査通りにマクロン60%、ルペン40%になるのか?マクロン候補は勝利宣言で「議会多数派を構築する」と早くも当選した気分でいるが、当選しても、問題は6月の総選挙だ。政党基盤のないマクロンが今後どうやって議会多数派を構成していくのか? 左右2大政党が瓦解した今、多くの政治学者の言うようにフランスの政界地図が大きく書き替えられるのだろう。だが、その行方は全く不透明だ。(し)