7月8~17日に来年以降の地上デジタル放送(TNT)周波数割当に応募した局の聞き取り審査を行った視聴覚デジタル通信規制局(Arcom)は24日、C8局とNRJ12を審査から除外するとした。
この2局の代わりに認可審査の対象になるのは地方紙ウエスト・フランス紙系列のOF TV、そしてチェコ系メディアのCMIフランスのRéelsTVの2つで、TNTに新規参入する。ArcomはC8を外した理由について「社会文化的な表現の多様性という必須条件に鑑みて」とした。バラエティー番組とシリーズものなどの多いNRJ12 については視聴者の少なさや再放送の多さが原因と考えられる。
TNTは現在、本土の全国・地方73局のうち、国営放送を除く15局はカナル・プリュス、M6、アルティス・メディアなどの民間企業傘下。その周波数割当は局により来年2月~8月に期限が切れ、 それ以降の認可(最長10年)については、Arcomの公募に応じた24候補が審査されて年末までに正式な許可が出る。1986年の通信自由関連法によると、放送局の義務は「情報の処理と表現における正直さと厳格さ」「憎悪や差別を煽らない」などがあり、加えてArcomは「思想や意見の表現の多様性」「株主の経済的利害からの独立性」などの基準で認可の是非を判断する。認可後に違反が認められれば、番組放映の停止、罰金、認可取り消しの罰則もある。
現在TNT枠で放映されているCNewsとC8は差別的発言や政治的意見の偏向などで度々問題になっている。今年5~6月に視聴率でBFMTV局を抜いたニュース専門局CNewsは移民、アイデンティティなどのテーマを頻繁に扱い、エリック・ゼムール氏を起用して極右思想を伝播していると批判される。一方、C8では特にシリル・アヌナ氏が司会を務めるバラエティー「Touche pas à mon poste(TPMP)」で司会者が同性愛者嫌悪発言をして300万€の罰金を科されたり、最近でも同氏が「服従しないフランス」党の国会議員に暴言を吐いて350万€の罰金を科されるなど2012年以降、Arcomから32回も問題を指摘されている。
両局ともメディア王ヴァンサン・ボロレ氏が2016年に買収したカナル・プリュスグループ傘下にあるが、近年急速に極右に接近しているボロレ氏がメディアの中立性を脅かしているとの批判の声が高い。憎悪や差別を助長するメディアを多数の国民が無料で視聴できるTNTに入れることはArcomの倫理基準に反するであろう。(し)