
1825年4/17の勅令によりハイチの独立の代償が要求された。
マクロン大統領は4月17日、ハイチの独立承認200周年を記念し、独立時にフランスがハイチに課した賠償金の不当性を認め、それの同国への歴史的影響を研究する両国共同委員会の設立を表明した。
仏領だったハイチは黒人奴隷や混血自由人が蜂起して1804年に独立を宣言したが、25年にシャルル10世の使節が軍艦を率いてハイチに赴き、独立指導者が仏系植民者から接収した農園や奴隷などに対する賠償金1億5000万フラン金貨を払わなければ宣戦布告すると脅して承諾させ独立を承認した。1838年には9000万フランに減額されたものの、1952年までに支払われた賠償金総額は現在の価値で4億9000万€。しかも、仏は仏商工銀行(CIC)にハイチ国立銀行を設立させ、ハイチ政府が同行に借金して高利子の賠償金を支払うよう仕向けた。この高額高利子の賠償金支払いによる同国の経済的損失は学者により210億~1150億ドルと見積もられる。
マクロン大統領は17日の声明のなかで、「ハイチは独立時から歴史の不当な力に直面した」、仏は「ハイチにとって苦痛をともなう記憶の構築において負うべき真実を認めなければならない」と独立賠償金の不当性を暗に認めた。その上で「両国の歴史家によって共通の過去を調べる仏ハイチ委員会」を設立し、独立賠償金の後世への影響を調査し、両国政府に関係改善のための勧告をするとした。仏のハイチへの賠償を求める委員会の会長は「良い方向への第一歩だが、きわめて小さな一歩」と評し、まずはハイチが払った賠償金の返還問題に言及すべきと批判。ハイチの研究者もマクロン氏の声明はハイチへの損害賠償方法の問題を先送りにする作戦だとした。ハイチは南北アメリカでも最貧国で、昨年からはギャング抗争で急速に治安が悪化。3月末の国連の報告書によると、ハイチの人権状況は危機的状態にあり、昨年7月から今年2月までに4239人が殺害された。
マクロンの今回の声明はハイチへの賠償まで言及していないが、仏の歴史的責任を認めた象徴的な意味は大きい。仏公益機関「奴隷制の記憶財団」は1月に奴隷制の被害者への賠償という考え方が熟したとの意見を出している。奴隷貿易の歴史を持つナント、ラ・ロシェル、ボルドーの3市長(左派)は、仏が責任を認めハイチ国民に賠償する手続きを始めるよう政府に求める文を17日付ル・モンド紙に寄稿した。今後、賠償へのコンセンサスが進んでいくのか?どう賠償していくのかも難しい問題だ。 (し)
