パリ・マレ地区、国立古文書館の一室。ギイィ、と音をたてて木の扉が開かれ、鉄製の収蔵庫が現れた。古文書館の中でも特に貴重な歴代のフランス憲法、ルイ14世の遺書、ルイ16世の日記、メートル原器・キログラム原器…などが保管されているという。
11月23日、ここに初めてDNAを情報記録媒体とした文書が収蔵された。デジタルデータをある変換規則に従ってDNAの塩基配列に変換したカプセル大の文書。100万年前のマンモスのDNAを解読できた例があるほどDNAデータは劣化が少なく、また超高密度に記録できるため世界中の膨大なデータもひとつの靴箱に収まるという。データ量が爆発的に増大しつづける今、世界が注目する次世代のデータ保管方法だ。
DNAを情報媒体として使う案は米物理学者リチャード・ファインマンが1959年に提唱していたそうだが、今回この技術を開発したのはソルボンヌ大学ピエール・クロゼ准教授と国立科学研究所のステファン・ルメール氏。ふたりは1789年の「人権宣言」と、1791年「女性の権利宣言」を選んでDNAデータにし、古文書館に収めた。
100万年保存が可能だとして、人間は存在しているだろうか? 実用化は2030年頃だという。(六)
https://lejournal.cnrs.fr/articles/stockage-de-donnees-la-revolution-sur-adn