魚屋に小さなヒゴイといった形の魚が並んでいる。このヒメジrouget barbet、フランスではなかなかの高級魚で、小さいものは唐揚げにされたり、大きなものは包み焼きにされたりする。肝ぎらいのフランス人もこの魚の肝は食べるので、腹の中に戻して調理していることが多い。
和風ならまず刺身。三枚におろし、小骨を骨抜きで丁寧にのぞき、赤い皮を切りそぐ。甘みを持った白身はなかなかの歯ごたえなので、薄くそぎ切りにする。しょう油にワサビ、あるいは三杯酢におろしショウガで味わえばいいのだが、ぼくは、うまい肝をスプーンなどで押しつぶしてから、レモン、しょう油少々でゆるくし、柚子胡椒少々を加えたものを用意し、これを魚のひと片にちょっとのせてはほおばる。
天ぷらも大関、横綱級だ。おろし身にし、小骨をのぞき、大きめだったら二つくらいに切り分ける。朱色が美しい皮はとる必要はない。ふつうに天つゆにつけて食べてもいいのだが、地中海沿岸の人を見習って、さっと塩とレモンを振りかけて食べるのがうまい、と思う。よいだしの出る頭や中骨は潮汁に。(真)