映画で描かれる「鉄の貴婦人」
老舗映画会社パテの「ジェローム・セドゥ=パテ財団」で、映画とエッフェル塔の関係をたどる企画展「Autour d’Eiffel エッフェルを巡って」 が開催中だ。これはロマン・デュリス主演の映画『Eiffel』との連動企画。映画はコロナ禍で10月13日からようやく公開になるが、片や展覧会はすでにスタートしており10月2日まで。同時開催はかなわなかったが、展示は映画の予習以上に楽しめるだろう。
有名建築家レンゾ・ピアノが設計し、2015年から一般開放を始めたパリ13区のパテ財団。ポスターや現場スチール、作中使用の模型、衣装が見学者をお出迎えする。ティエリー・ドゥレットルによる衣装はベルエポック期の優雅さが漂うが、デニム素材をドレスに使用するなどモダンなアレンジも光る。
エッフェル塔はパリ万国博覧会の目玉として1889年に誕生。「鉄の貴婦人」も今年で132歳だ。建設中はあまりにも斬新な設計に反対の署名運動も起きた。しかし開業後は人気爆発、7ヵ月でパリの人口の85%に当たる200万人が登った。塔のイメージを使った皿やカードなど関連商品も作られたが、展示ではそれらを集め熱狂の名残を今に伝える。
1895年生まれの「映画」はエッフェル塔より6歳年下の発明品。黎明期からエッフェル塔を名脇役として登場させた。展示ではエッフェル塔が印象的に登場する作品を抜粋で紹介。例えばルネ・クレールの『眠るパリ』(1923)、アンドレ・ウゼとジョルジュ・アトの『かつら競争 La Course à la perruque』(1906)など。タイトルからして気になる映画だが、風船で飛ばされたかつらを追いかけるスラップスティック・コメディ。バカバカしくも心和む6分の短編。ネットでも鑑賞できるので、仏題を入れ検索してほしい。
地下展示室には年代物のポスターや写真が並ぶ。エッフェル塔はサクレクールやノートルダムと同様、時代の波にのまれずパリを代表するモニュメントとして数々の映画に出演。『巴里のアメリカ人』『パリの恋人』などハリウッドミュージカルの隆盛期には、ロマンティックなドラマの盛り上げ役に。ところがフランスの監督にかかれば新たな顔も付与される。トリュフォーの『日曜日が待ち遠しい!』では、エッフェル塔が凶器に変わる。そんな変遷を見るのも面白い。
本財団は無声映画の上映会、カメラコレクションの常設展、庭付きカフェもある。芸術の秋に訪れたい隠れ家のような映画文化のミュゼだ。(瑞)
◎ 「Autour d’Eiffel」展 2021年10月2日迄
Fondation Jérôme Seydoux-Pathé :73 avenue des Gobelins 13e
M°Place d’Italie / Les Gobelins
www.fondation-jeromeseydoux-pathe.com
展示室 : 火13h-20h、水~金13h-19h、土11h30-19h、日・月休
展覧会 (映画鑑賞なし)3€/展示室入場+映画鑑賞で大人 7€/ 学生・65歳以上・26歳未満 5.50€/ 14歳未満 4.50€。毎土曜12hに建物見学会あり7€。
◎ 映画 『Eiffel』
「鉄の魔術師」と呼ばれた男、ギュスターヴ・エッフェルの伝記映画。一流の技師で建築業者・エッフェル氏の半生をドラマティックに描く。世界一の高さ(当時)の塔を完成させるまでの設計の裏側を丁寧に描くので、建築に興味がある人にもお勧めだ。主演はロマン・デュリス。エッフェルが想いを寄せる人妻アドリアンヌ役には、Netflixドラマ「セックス・エデュケーション」で注目された英仏国籍のライジングスター、エマ・マッキー。監督は大ヒットコメディ『Papa ou Maman』シリーズの気鋭マルタン・ブルブロン。10月13日劇場公開。
Fondation Jérôme Seydoux-Pathé
Adresse : 73 avenue des Gobelins, 75013 Parisアクセス : M°Place d'Italie / Les Gobelins
URL : https://www.fondation-jeromeseydoux-pathe.com