8月14日11時40分、イタリア・ジェノバの高架橋(高さ45m)崩落では30台余りの車やトラックが転落、死者43人、負傷者9人を出した。犠牲者には19〜22歳のフランス人旅行者4人も含まれる。
橋の近くの住宅から600人以上の住民が強制退去させらるなどの人的被害に加え、南仏につながる高速道路A10の一部であるモランディ橋が通行不能に。コンテ伊首相は15日、ジェノバ市に1年間の非常事態宣言を発令し、500万ユーロの緊急対策費を支給するとし、トニネッリ運輸相はA10を委託運営しているアウトストラーデ・イタリア社の経営陣の辞任を要求。同社はモランディ橋を3ヵ月毎に検査しており、事故当時も補修工事の最中だったと反論。遺族への補償金と橋の再建に5億ユーロを用意すると表明した。
伊エンジニアのリッカルド・モランディの設計で1967年に完成した、長さ1.18kmの橋は、コンクリートで包んだ鋼鉄ケーブルが橋桁を支え、しかもケーブルの数が少ない独特の構造。80年代にはすでに構造上の問題が指摘され、取り壊しや別に高速道路を建設する案も検討されていた。伊紙は、2013年以降、国内で11の橋が崩落したと報じ、ジェノバのあるリグーリア州だけでも50~60年代に建設された5千の橋が老朽化しており、国内全体の道路は維持補修が不十分だと批判している。
この事故を機に、フランスでも橋や道路の安全性を危惧する報道が相次いだ。民間委託でない高速道路・国道の状態に関する6月の監査会社の報告書では、同道路網の1万2千の橋の30%が補修工事を要し、7%は老朽化が激しく、放置すれば将来崩落の危険がある上、道路も29%が「劣悪な状態」で、年間13億ユーロの道路(橋・トンネル含む)メンテ費用が必要としている。そのための政府予算は2017年で7億ユーロ、18年で8億ユーロとその額を下回る。昨年12月から何度も列車運行が麻痺する事態が発生している鉄道も老朽化が懸念される。最近の報告書は、対策を講じなければ2025年には5万kmの鉄道のうち3分の2は使えなくなると警鐘を鳴らしている。新規インフラ建設よりも既存の道路や鉄道などの維持補修が重要な時期に来ているのかもしれない。(し)