Covid-19関連の規制が段階的に解除され、6月9日には夜間外出禁止が23時に延ばされ、レストラン・カフェの屋内飲食が可能になった。商店、飲食業のテラス、文化施設も先月から再開されており、バカンスを前に街に賑わいが戻ってきた。
一部で変異種のクラスター発生などの不安要素もあるが、新規感染者や重症患者数も減り、ワクチン接種も進んでおり、状況は大きく改善されているように思える。今年の経済成長率も5%と予測されているが、その一方で、手厚い支援が終わると融資の返済、税金や社会保険料猶予分の支払いなどで今後、中小企業を中心に業績が悪化する企業が急増するのではとの懸念が出始めている。これを受けて経済省は6月1日、コロナ危機からの復興のための支援策を発表した。フリーダイヤルによる企業主向け相談体制、再建の司法手続きの簡略化、負債の分割払いなどによって企業をフォローし、必要な企業には政府保証付き融資を年末まで延長。50人未満の企業には特別融資(10万ユーロまで)、国による負債の一時肩代わりなどだ。当初の融資返済期間6年を超えることもでき、税金・社会保険料の借金は場合によっては最長48ヵ月の分割払いも可能になる。大企業向けには「移行基金」(予算30億ユーロ)を設置し、融資や自己資本注入などの措置をとる。
昨年3月のマクロン大統領の「どんなに高くついても(経済を支える)」政策により、2020年の破産手続き件数は前年比38%減で約3万件。政府保証融資はこれまでに67万5000の企業、総額1390億ユーロに上る。支援が終われば、コロナ前の倒産件数(2019年5万件)を超えると予測する専門家もいる。とにかく今年いっぱいは各種の支援が続くようだが、その後の状況は未知数だ。
コロナの傷跡が危惧されるのは経済界ばかりではない。2日に不平等監視機関が公表した報告書によると、国民の大多数は「部分的失業」手当などにより生活水準は下がっていないものの、失業者、有期雇用や派遣社員、季節労働者、大学を卒業したばかりの若者など不安定な収入しかない人や社会的弱者に打撃を与え、貧富差や生活環境の格差を広げたとしている。15~24歳で生活が不安定な人は52.7%に上る。生活保護(RSA)受給者数は昨年30万人増加して200万人を超えた。
コロナが今年中にも収束すればこうした状況も徐々に改善されるだろうが、まだそこまで先の見えない現状では、将来への不安感をぬぐえない人は多いだろう。(し)