フランス人は、今晩のメインは牛肉の南仏風煮込みにしよう、あるいは鶏のロースト、あるいはサケのグリルにしようなどと決めると、付け合わせ accompagnement をなににしようかと頭をひねり、買いものリストを作る。というのも、付け合わせは、メインの食材のうまさを引き立てる、脇役以上の大切な役どころだからだ。
肉料理の付け合わせは多種多様
牛肉や、豚肉、あるいは子羊肉の切り身をフライパンで焼いたり網焼きにしたり、あるいはかたまりをローストしたりするのなら、付け合わせにまずジャガイモを考える。この連載〈はじめてみよう〉⑬と⑭の「ジャガイモ万歳」を参考に、カリッと揚げたり焼いたりしたフリットやポム・リソレ、マッシュポテト、グラタン・ドーフィノワを用意する。これだけではちょっとさびしいと思うのなら、ゆでたサヤインゲン、ニンジンのグラッセ、旬のグリーンピースやグリーンアスパラガス、キノコをいためて添えれば、彩りもきれいだ。
カモの胸肉のソテーには、イチジクの季節なら、半分に切り分け、さっとバターいためして添えるのが、ぼくの定番で、カモ肉には、イチジクの甘酸っぱさがよく合う。
また牛肉や鶏肉のワイン煮やビール煮の付け合わせには、ゆでたジャガイモで決まりだが、小さなショートパスタ、コキエットcoquilletteもいい。子牛のクリーム煮blanquette de veauには、レストランでもライスが添えてあることが多い。
血の腸詰めのブダン・ノワールには、マッシュポテトにリンゴのコンポートやバターいためを付け合わせると、その甘酸っぱさがよく合うようだ。
魚料理にはゆでたジャガイモかライス
エイのヒレをゆでて溶かしバターをかけたり、ヒラメや真ダラを焼いてクリームソースを添えたりするときは、その白身の繊細な味わいを邪魔しないようにと、ゆでたジャガイモが一番だ。ぼくはバターいためしたマッシュルームも添える。
タイやサバ、あるいはマグロを焼いて南仏風トマトソースをお供させるのなら、ハーブやスパイスもきいているので、ライスがいい。ぼくはオリーブ油風味でたくことにしている(コラム参照)。シンプルにサケをグリルするならホウレンソウの生クリーム煮がよく合う。そこに、ホウレンソウといっしょにオゼイユ適量を混ぜ入れれば、その酸みがうれしい。
オーブンでタイなどを丸ごと焼くときには、タイの脇にフヌイユやトマト、ジャガイモを置いて同時に焼けば、それがそのまま付け合わせになってしまう。(真)
付け合わせとしてのご飯
Riz comme accompagnement
フランス料理では米はあくまで付け合わせ用で、一人当たりの消費量は年間約5キロちょっとというから、日本人の消費量の10分の一だ。一般的な作り方はクレオール風 riz créoleといい、鍋に水をたっぷりとって沸騰させ、塩をちょと加え、米を好みの量加え、米が柔らかくなったら、パソワールにあけて水ですすいだら鍋に戻し、バターを加えて混ぜ合わればでき上がり。それも粒が長い米riz long だから、あまりくっつかずにサラリ。米の味もあまりしないけれど、米はあくまでも付け合わせで、トマトソースやクリームソースと混ぜ合わせて食べるものだから、これでいい、ということになってしまうのだろう。「くっつかないincollable」(写真)がうたい文句の米まである。日本風にたいたりしたら、逆に重いときらわれたりする。
ぼくがフランス料理の付け合わせ用に米を調理するときは、タイの香米を使うことにしている。やや少なめの水加減で炊飯器を使ってたくのだが、オリーブ油(あるいはバター)大さじ一、二杯やローリエの葉一枚、塩少々も加えてからスイッチを入れる。これはフランス人にも大好評だ。
生や冷たい料理の付け合わせ
Accompagnements pour les plats froids
肉や魚を、生のまま、あるいは一度火を通したものを冷まして食べるときの付け合わせといえば、やはりサラダが多い。牛肉のカルパッチョ、ローストビーフやローストポークを冷ましたものの薄切り、タイやヒラメのカルパッチョ、サバや真ダラをクールブイヨンや白ワインで煮てから冷ましたものなどには、旬の野菜をとり入れたミックスサラダやグリーンサラダを添えるといい。ローストポークのときにはマヨネーズ入りのポテトサラダも合う。タルタルステーキにはレストランではフリットが付け合わせとして出てくるが、ぼくはサラダですます。