Q:ちなみにお店のメニューは誰が決めていますか?
松根:一応私です。お姉さんのアドバイスも頭に置いて、定番と季節の食材を合わせながら考えています。今はそうでもないですけれど、前の店の時には大量に作っていたので、hachis Parmentier(アシ・パルモンチエ=挽いたまたは細かく裂いた(牛)肉と砕いたまたはピューレ状のジャガイモを重ねてオーブンで焼いたもの)などはコロッケに転用したりしました。大体はすじ肉を挽肉に転用するというようなことです。
Q:無駄がないようにするのは大切ですよね。
松根:そういうコツも全部お姉さんから教わりました。
Q:やっぱり商売をしているとはいえ、家庭の知恵なんだな。さて、今後の計画は?
松根:あの2015年のテロ事件がある前にもう1店舗を、と動いたんですがその後頓挫しているので、もう少し景気が良くなるのを待って、新しいことをしたいな、と思っています。
Q:じゃあもう1店舗開きたいという気持ちは?
松根:今はないです。15区の時にも13区の時にも「次はどこで何を」という気持ちがありましたけれど、ここで一度心が少し折れたので今は盛り返していかなければ、と思っています。ローンを少し残したまま改装工事をする?というような話も出ています。
Q:ここはもともとレストランだった?
松根:そうですね、100年ぐらい前からレストランだったみたいです。建物自体は1600年代と古くて、歴史建造物にも指定されているのであまり改装をする時に手を加えてはいけないという決まりがあります。枠、柱などは残しながら2階部分を取り除くことはできるみたいです。
Q:2階を取るのは残念ではない?
松根:でも、工夫すれば今よりも広く感じられるかもしれないらしいです。
Q:さて、皆さんにお聞きしていることですが、その質問を最後にさせてください。晶子さんにとって、お料理とはなんですか?
松根:困っちゃいますね、そんな質問(笑)。日常というものが私は好きで、大事にしたいと思っています。 20歳にもうすぐなる一番上の子供は2-3年前から煮込み料理を食べるようになった。昔は全然見向きもしなかったんです。レンズ豆にしても、昔は嫌いだったはずなのにこのところ「うん、食べる」と喜んでいる。だんだん大人の味覚に変化してきているのだ、ということを実感しながら自分の子供を通しても「食」というのは変わってきています。私自身子供の頃、お肉屋さんのコロッケが美味しかったことを覚えている。やっぱり自分で経験したことからしか私はできません。そういう環境の中でこれまで働いてきました。自分が経験したこと、嬉しかったことを他の人に提供していければ、と思います。結局私にはそれしかないので。例えば私が作った惣菜を家に持って帰って「美味しい」と食べてもらえる、それを楽しみにしてもらえる、のであれば始めてよかったな、と思います。考えてみれば、いつもそういうことの積み重ね、身近な料理を自分は作りたくて、作ったら色々な形で広がって今がある。
Q:確かに、普段の美味しいものが一番だと私も思います。
松根:その普段の、なんてことないものがいつもちゃんと作れる、のが大切です。ちょっと手を抜くとすぐに手を抜いたことがわかるものになってしまう(笑)。
— 楽しいお話をありがとうございました。今度コロッケを買いにきます。
L’Auberge Café
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