6月11日、18日の国民議会選挙で、マクロン大統領の政党「共和国前進」(LREM)が308議席を獲得し、単独で国民議会(定数577)の過半数を占めた。提携する中道Modemの42議席と合わせると350議席。11日の第1回投票の直後には400〜450議席との予想もあったが、決戦投票では対立候補に票が流れ、2002年の右派連合394議席には及ばなかった。
共和党は112議席で、民主独立連合(UDI)18議席と合わせると野党最大勢力130議席を確保したが、改選前の226議席から大きく後退。しかも共和党では、マクロン政権に反対する主流派に対して、政策によっては新政府を支持すべきとする議員約15人がUDI議員18人とともに新会派を立ち上げたため、野党としての力は弱まりそうだ。
一方の社会党は、前回280議席から30議席と壊滅的な敗北を喫し、急進左派(3)、エコロジー(1)と合わせてもわずか34議席。躍進したのはマルセイユで当選したメランション氏率いる「服従しないフランス」の17議席で、議会の会派を結成できる15議席を突破した。
国民戦線党(FN)は前回の2議席から8議席に。ルペン党首はパ・ド・カレー県で58.6%の得票率で念願の国民議会議員になったばかりか、姪マリオンの政界引退の穴を埋めて余りある成果を上げた。FNは得票数だけを見ると、第1回投票で299万票、決戦投票でも159万票と、LREMと共和党に次ぐ第3位。
マクロン政権の閣僚6人は、職権乱用疑惑のあるフェラン氏も含め全員が当選。これを新政権への世論の支持とする見方もあるが、第5共和政始まって以来の低い投票率(42.64%)からは、有権者のLREMへの不信感も透けて見える。前議員中223人が出馬せず、206人が落選したために、新議員が75%(431人)と、国民議会議員は大幅に入れ替わった。女性が38.8%(223人、LREMに限れば47%)、平均年齢も54歳から48.6歳に若返った。
こうして、政治地図の書き換え、新人と民間(非政治家)導入で国民議会の刷新という第1段階の目標を達成して地盤を築いたマクロン大統領は、22日に改造内閣を発表し、本格的な政治案件に取り組む。労働市場、健康保険制度、年金制度の改革など難しい案件が目白押しだが、まずはこの夏~秋から始動する労働法改正が政権の試金石になるだろう。(し)