39歳の大統領が誕生した。5月14日、大統領官邸で政権交代が行われ、エマニュエル・マクロン新大統領が就任した。
5月7日の大統領選挙決選投票で、「En marche!(前進!)」のエマニュエル・マクロン候補が66.1%の得票率で、国民戦線党(FN)ルペン候補(33.9%)に大差をつけて当選した。この結果に胸をなで下ろした人は多いだろう。オーストリアとオランダに次ぎ、フランスが極右政党の政権掌握を阻止したことは喜ばしい。
しかし、メランション候補が「ルペンは、マクロンと棄権/白紙・無効投票に次ぐ第3位にすぎない」と発言したように、投票率は74.56%と、第1回投票77.8%を下回り、とくに白紙・無効票は11.47%(第1回投票は2.6%)という記録的数字になった。当のメランション候補がルペン阻止を明確に呼びかけなかったことも影響している。同候補支持者は決戦投票に36%が白紙・無効投票、29%が棄権と表明していた。
敗退したルペン候補は決戦投票で1千万の大台を超える1060万票を獲得し、「歴史的快挙」と自画自賛、総選挙への意欲を見せた。だが、予想された40%に達しないスコアに内部批判も出ているようだ。
マクロン氏は第1回投票後の浮き立った調子を捨て、ルーブル宮広場に集まった数千人の観衆を前に「われわれに課された使命は甚大だ」と、厳かな表情で宣言した。公約を実現するためには、6月の総選挙で議会の過半数を得なければならない。8日に「La République en marche(前進する共和国)」と改名したマクロン陣営は、初の総選挙に挑む。ネット公募で選抜された公認候補者リストが11日、発表された。全議席577のうち、428席の候補者が連なるリスト中、214席は男性候補、もう214席は女性候補、平均年齢は46歳だ。52%は議員経験のない一般市民が候補者になる。こうした全く新しい実験が袋小路に陥った政局を打開し、仏社会をいい方向に向かわせることができるのだとしたら、期待したいところだ。
議会過半数が実現できるとしたら、左右両派はどう関わっていくのか?共和党の総選挙責任者バロワン氏は、ルメール氏のようにマクロン側に流れる候補は党を除名すると守りの姿勢。社会党は修復不可能な分裂状態だ。ヴァルス前首相のようにマクロン陣営につく人、エコロジストや共産党と組んで左派本流を再構築しようとする人(つまり野党になる)、カンバデリス社会党第一書記のように政策によってはマクロン氏を支持しつつ独立を保つことを主張する人。そして、最大野党の座を狙うメランション氏とルペン氏。一体どんな結果になるか、まったく予測がつかない。
今日、首相が任命され、明日は新内閣が発足する。(し)