
パリをはじめとする国内・欧州の主要都市の住宅不足が近年、問題視されるなか、6月20日付ル・モンド紙はパリの深刻な賃貸住宅不足について詳しく報じた。
パリ市都市計画部によると、民間の賃貸物件は2011~2020年に毎年8000軒ずつ減少した。その減少数は、セカンドハウス増加(8000軒)と熱効率が悪いため賃貸不可になる物件(7000軒)により、2025年には1万5000軒に達する可能性があるという。もっと長いスパンで見ると、1982〜2021年の間に民間の家具なし賃貸物件は53.1万軒から35.3万軒に減った。その減少の第1段階は80年代から2010年までで、住宅購入が増えたためと、銀行や保険会社などの家主が住宅ビルを売却したために11万軒減少。第2段階の2010~2021年には観光客向けの物件(Airbnbなど)や家具付きの短期賃貸が5万軒増え、通常の賃貸物件は7万軒減った。こうして計18万軒が減少したわけだ。2022年半ばからは住宅ローンの金利が上がって購入が難しくなったため賃貸に居残る人が増えて市場に出る物件が少なくなった。さらに観光客向けの短期貸しも増え、パリ市はパリ五輪開催中の昨年8月、観光客向け短期貸し物件を9.8万件確認した。バルセロナ市が昨年6月に観光客向け短期賃貸を2028年までに禁止すると発表したように、リスボン、ベルリンなども規制策を講じている。パリ市も年間90日間までとか、許可申請の義務化など規制を強めている。
もう一つパリ市が懸念しているのは人が住んでいない空き住宅だ。空き住宅は裕福な外国人や地方在住者のセカンドハウスの場合もあれば、家賃や熱効率の規制のために貸しても儲からないと家主が考えて、貸していない場合もある。2011~2020年の間に空き住宅は全体の14%から18.8%に増えて26.2万軒に。この割合はニース28%、グルノーブル17%、ナンシー16%などもかなり高い。
住宅不足に追い打ちをかけるように、パリの家賃は2001年の15.1€/㎡から2024年は27.2€/㎡と20年強で倍近くになった。2019年7月から家賃規制が始まったものの、賃貸は貸し手市場だ。学生、働き始めた若者、子どもが小さい家族などにはとくに見つけにくい。まだ80~90年代には残っていた住民のための商店街は次第に観光客向けの生活感のない街に変わっていった。こうしてパリは人口が減り(1954年は284万人、70年代に250万を切り、2025年は214万人)、単なる観光地のようになってしまうのか?(し)
