フランス料理でたのしいのは、魚や肉のグリルやソテー、ローストに添えられるソースのバラエティー。今回は、魚料理向きで、誰にでも作れるソースです。
小鍋に150グラムほどバターをとって軽く塩、コショウし、中火にかけて少し色がつくまで火を通し、ケッパーを大さじ1杯ほど加えればブール・ノワゼットbeurre noisetteというバターソース。これを、クール・ブイヨンで煮たエイのヒレにかけまわした一品は、フランス料理の定番だ。バターの香りが、淡白な白身魚の味わいをひき立てる。
ヒラメなどの白身魚に適したソースといえばbeurre blancが名高いが、すごいバターの量だし作り方もやや複雑なので、ノルマンディー風に生クリームを使ったソースで代用してみよう。小鍋にバターをとり、みじんに切ったエシャロット2個を加え、弱火にかける。エシャロットが透きとおってきたら、マスタード小さじ1杯、白ワインを100cc注ぎ、混ぜ合わせる。中火にし、ワインが1/3の量になったら、生クリームcrème épaisseを大さじ4杯入れてかき混ぜる。軽く塩、コショウ、砂糖一つまみも加え、グツグツッといったらでき上がり。魚によってパセリやバジリコの葉のみじん切り、ケッパーや薄切りのマッシュルームを加えて変化をつけたい。トマトケチャップ少々を加えれば、子どもたちは大喜びだ。
タイやサバなど脂がのった魚には、プロヴァンス風、トマト風味のソースがいい。鍋にオリーブ油をとり、みじんに切った玉ネギ1個とニンニク3片を弱火でしばらくいためる。フュメ・ド・ポワソン300cc(なかったらインスタントの粉末〈fumet de poisson〉を使う)を加える。半分の量になるまで煮詰め、トマトピューレ300~400グラム加えるのだが、市販のなめらかなピューレcoulis de tommateがいいだろう。混ぜ合わせながら弱火で15分ほど火をとおし、軽く塩、コショウで味を調える。タイムやバジリコの葉、エスプレット産の唐辛子粉、あるいはアンチョビーペーストcrème d’anchoisを加えたりして、さまざまなヴァリエーションを試してみたい。
これだけできたらもうソース作りはこわくない。フランス人からも拍手!(真)
以上のソースの分量は4人分です。
Sauce au poivron rouge
タイやスズキのおろし身を焼いたときに赤ピーマンのソースを添えたりしたら星付きレストラン並みになる。といっても作り方はいたって簡単。まずオーブンの上火で、赤ピーマン2個を皮がこんがり焦げるまで焼いてから皮をむく。ぼくは二つに切り分け、へたや種をのぞいてから焼くことにしている。小鍋にニンニク2片をとり、大さじ2杯のヴィネガーで数分煮る。ピーマンとニンニクとオリーブ油大さじ3杯をミキサーに入れ、ピューレ状にすればでき上がり。鮮やかな朱色の、ピーマンの香りがうれしいソースです。
Fumet de poisson
連載「はじめてみよう、フランス料理」5回目でフュメ・ド・ポワソンの作り方を紹介しているけれど、いざというときに作りおきがない場合も多いから、そんなときはインスタントの粉末を利用する。小さじ1杯を水300ccで溶いて沸騰させれば、即座にフュメ・ド・ポワソンができ上がるという手軽さ。味がややくどいと思ったら、粉末を少なめに加え、水を半量にし、白ワインを同量加えて味をよくするのもいいだろう。魚用のクールブイヨンやソースに入れてみたり、スープ・ド・ポワソンの味わいを濃くするために加えてみたり、いろいろと使い勝手の多い調味料だ。
Crème d’anchois
今回の魚料理向けトマト風味ソースに使った、チューブ入りや瓶入りのアンチョビーペーストは、冷蔵庫に常備しておくといろいろと便利。魚や、ときには肉の煮込み料理の隠し味にするとおもしろいし、これさえあれば、タップナードも簡単にできてしまう。種を抜いた黒オリーブあるいは緑オリーブ100グラム、ケッパー小さじ1,2杯、アンチョビーペースト大さじ1杯、オリーブ油大さじ2杯をミキサーでペースト状にするだけだ。これをトーストしパンに塗れば素敵なおつまみになる。