『Woman at war』正攻法では生き延びられない。

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 山間地帯でワイヤーを切断する女がひとり。環境汚染に関与するアルミ工場に闘いを挑む環境運動家ハラだ。政府は破壊行動に手を焼き、犯人探しに躍起になる。彼女の表の顔は生徒に慕われるコーラスの先生で、過激な活動家のイメージとはほど遠い。

ある日、ハラのもとへ孤児の養子縁組許可の知らせが届く。待ち焦がれた母となる道だが、活動家との両立は困難。彼女の選択とは?

 エコ・スリラーに家族ドラマが加わる脚本は個性的だが、さらにその演出が心憎い。音楽を愛するハラの頭の中は、音符で満ちている。荒野を走れば音楽隊の演奏が始まり、孤児の少女に想いをはせれば、民族音楽のコーラス隊が現れる。活動家や孤児など、重めに扱われがちなテーマも、詩的なユーモアに包まれるよう。『馬々と人間たち』で鮮烈なデビューを飾ったアイスランド人ベネディクト・エルリングソン監督の長編第2作。カンヌの批評家週間で、SACD(劇作家・劇作曲家協会)賞を獲得した注目作だ。
振り返れば今年のカンヌ映画祭は、「闘う人々」の映画が多かった。しかし、労働者争議を描く『En Guerre』や、クルド人女性兵士が戦線に出る『Les Filles du Soleil』など、正面から闘いを挑む主人公の作品はさほど注目されなかった。一方、この歪んだ世界で独自の闘い方を編み出す人々の物語が共感を集めたのだ。血のつながらぬ人々が身を寄せる『万引き家族』、KKKに黒人警官が潜入する『BlacKkKlansman』、子供が実の親に裁判を起こす『カペナウム』など。そしてこの環境運動家のハラもまた、独自の闘い方を編み出した女性と言える。もう正攻法の闘い方では生き延びれられぬ時代、ということだろうか。(瑞)