マクロン大統領が識者グループに依頼した『フランスの肖像』リストが国土連帯・地方自治体関係省のサイトに掲載され、一般も閲覧できるようになった。フランス革命から今日まで230年間の海外県・領土出身者、旧植民地や他の国からフランスに渡って活躍した318人の名前が並ぶ。フランスの道路や公共の建物の名を決める権限を持つ市町村長と議会にこのリストを見てもらい、街に多様性をもたせるネーミングをしてもらおうというものだ。単なる名前の一覧ではなく、各人物の紹介文、ゆかりのある地方なども記載された450ページ。日本出身者では画家のレオナール・フジタ、ファッション・デザイナーで昨年他界した高田賢三などがいる。
昨年5月米国で起きたジョージ・フロイドさん殺害事件を機に、フランスでも差別や植民地支配の歴史を見直す気運が高まった。国民議会前に鎮座する、「黒人法」で奴隷の管理を法制化したジャン=バティスト・コルベールの彫像に落書きがされ、撤去を求める声が上がった。マクロン大統領は撤去には反対だが、成功する機会は出自にかかわらず、移民でもその子孫でも同じであることをアピールするため、歴史家パスカル・ブランシャールにこのリストの作成を依頼。小説家レイラ・スリマニ、歴史家のパスカル・オリーほか出身地や専門分野も「多様」な18人が準備にあたった。アライア、ラシッド・タハなど知られた名前から、ギニア出身でフランスの対独レジスタンスで命を落としたアディ=バ、セネガル出身でフランス初の黒人議員になり奴隷制廃止に貢献したジャン=バティスト・ベレーなど、忘れられていた英雄たちに光をあてた。今は第2部、今生きている人のリストの準備が進行中だ。フランスでは通りの1割が、テディ・リネール(柔道家)、アラン・ドロンのように生存者の名がついているという。
差別や偏見は根強いが、歴史を知ることで解消されていく部分もあるだろう。この取組みが各地で積極的に実施されることを願う。(六)