欧州委員会は7月20日、来年3月までの天然ガス消費を過去5年間の同時期平均より15%減らすエネルギー需要削減計画を提案した。この案が加盟国の協議で承認されれば、各国は9月末までに削減案のロードマップを提出する。フランス政府もガス・電気の消費削減策を検討中だ。
EUの省エネ計画は、ロシアが11日に定期点検と称してロシア=ドイツ間のパイプライン「ノルドストリーム1」によるガス供給を止めたことに対処するもの。フォン・デア・ライエンEU委員長は「ロシアはガスを武器として使っている。EUは供給の完全停止に備えるべき」と強調し、暖房の制限、企業の省エネ、原子力発電所の閉鎖延期などを呼びかけた。ウクライナ戦争前のEUはガス需要の4割をロシアから輸入していたが、ロシアはEUの制裁に対抗して、ルーブルによる支払を拒否したポーランド、ブルガリア、オランダ、デンマークへのガス供給を4~5月に相次いで停止。6月半ばにウクライナがEU加盟候補国になるとその他の国々への供給も約半分に。他国からの輸入増は液化ガス再ガス化設備の不足などにより、思うように進展しない。ガス燃料の石油転換、石炭発電所の増加・再開などの対策も一部で行われている。ロシアは21日にノルドストリームを再開し、戦争前の4割という点検前のレベルに戻したが、2割に落とすこともほのめかしている。
フランスでも危機感が高まり、政府は今後2年間でエネルギー消費を10%、50年までに40%削減を目標に省エネの姿勢を示した。従来もっぱら環境保護派によって主張されていた「エネルギー節減」を、マクロン大統領が14日のインタヴューで初めて政府の方針として明言した。政府は国、企業、文化・商業施設の3分野での省エネ対策の作業部会を設け、9月に対策を発表する予定だ。大型スーパー連合は18日、閉店後の消灯や照明を弱くするなどの電気節減策を10月15日から始めると発表。政府は、扉を開けたままの冷暖房の禁止(罰金750€)、朝1~6時の広告照明の禁止(同1500€)を盛り込んだ政令を近く出すとしているほか、室温19℃以上の暖房、26℃以下での冷房をしない、テレワークを週3日にする、1人だけの自動車使用を制限するなどの案を検討中だ。
70年代のオイルショック時のような厳しい省エネ対策が採られるようになるのか? いずれにしても、再生可能エネルギーの進展とともに、地球温暖化対策としての省エネも含めて長期的な対策を各国が模索していかなければならないだろう。(し)