『Dans la terrible jungle / 恐ろしいジャングルの中で』という題名に惹かれた。このフレーズは、かっての世界的ヒット曲 “Le lion est mort ce soir” の歌詞の一節。諏訪敦彦監督『ライオンは今夜死ぬ』の題名もこの歌に由来する。
この「恐ろしいジャングル」の舞台は、芝生と木立に囲まれたパビヨンが点在するのどかな場所だ。主人公は、ここで生活する思春期の若者たち。彼らは、世間では普通に暮らせないハンディをもっている。ここは一種の施設のようだ。たまに画面に教員のような人たちも登場するが、基本、主人公たちはここで自由気ままに自活しているように見える。
この映画は、実在する人物の日常を撮っているという点ではドキュメンタリーなのだが、彼らがただ映される対象に留まらず、積極的に映画作りにコミットしているのが分かる。彼らは、みんな個性的で、世間の同世代の子たちような画一性がいっさいない。
車椅子をぶっ飛ばしてニュース解説のように喋くりまくる子、図体がやたらにデカい16〜17歳の青年は突然発作を起こし、地べたを転がり回る。バットマンのお面とスーパーマンのマントに身を包む大人になる気がなさそうな青年。すごいなと思ったのは、13〜14歳の弱視の女の子、オフェリーちゃんのリズム感。音楽が鳴っていれば大喜びで直ぐにリズムに乗ってくる。日常生活もリズムに乗ってて歯を磨く時のリズムとかはびっくりだ。またレアちゃんという16、17歳の抜きんでてしっかりした娘は、プロになれるくらいの歌唱力だ。
この映画、ここが何処だとか登場人物がどういう事情でここに居るのかとか、そういった説明は一切ナシ。それより今ここに存在する彼らが何より愛おしい。そんな姿勢の映画だ。オンブリーヌ・レイとキャロリーヌ・カペル女性コンビの監督作。(吉)