海藻?海の野菜?サリコルヌ。
干潮時の海辺で人が何やら地面をむしっている。籠には緑色の野菜のようなもの。6月中旬から8月下旬にかけて見られるこの光景は、ブルターニュの風物詩だ。 学術的には植物に属するこのサリコルヌは、魚屋で売っていて、日本名はアッケシソウ。この時期になると、日本でいう潮干狩りのように採取をするそうだ。買うよりも断然自分たちで採ったほうが楽しいけれど、どこにでも生えているわけではないので地元の人に聞く必要がある。皆、それぞれのテリトリーがあるようだ。もしバカンスにブルターニュに行く機会があれば、まずはキオスクなどで潮見表を入手し、地元の人にサリコルヌの取れる場所を聞いてみるといい。
ということで、この海藻とも植物ともいえぬサリコルヌを使ったレシピ3品を紹介しよう。どれも下ごしらえとして、水で洗う。
最初は、なんといっても一番オーソドックスな酢漬け。いわゆるコルニションと同様の食べ方だ。ホワイトビネガー80%に水20%の割合で、瓶に胡椒の粒、ミニオニオン、人参の輪切り、ローリエなどを入れサリコルヌを加える。スプーン一杯分の黒砂糖を入れると酸味がまろやかになる。1カ月後には褐色に変わるものの、サリコルヌの塩分と漬酢が混じった歯ごたえのある出来になる。もちろんシャルキュトリーのお供に。
2品目はスープ。鮮やかな色を楽しみたい。4人分で160gのサリコルヌを用意。キュウリ半分(種が気になる場合は取り除き、皮は半分だけむく)。レモン汁1個分、ナチュラルヨーグルト1カップ。エキストラヴァージンオリーブオイル少々。すべての材料をミキサーにかけるだけ、というとても簡単な調理方法だが、冷蔵庫でキリッと冷やしたスープに、辛味のパプリカ、あるいはチリペッパーをかけて食べるとアクセントがつき、まるで緑色のガスパッチョの風合い。スープというよりも、とろみがあるヴルーテに近いかもしれない。
3品目は炒め料理。上記2皿のレシピでお気づきの方もいらっしゃるでしょう。そう、サリコルヌ自体はとてもしょっぱい。調理に塩は必要ないのだ。よって、炒める時には一晩水にひたして塩抜きする必要がある。フライパンに刻んだニンニクをオリーブオイルで炒め(ブルターニュ人は塩バターで炒めることだろう)、そこに水を切ったサリコルヌを加える、胡椒だけふりかける。魚は、淡白なもの、例えばタラ科の魚lieu jaune、あるいは内臓をとった小ぶりのクロダラmerluを丸ごとでもいいかもしれない。オリーブ油をひいたフライパンで両面を焼き、サリコルヌの上に盛る。コリアンダー、あるいは旬の香草を添えてレモンを絞る。フランス料理っぽくするのであればオランデーズソースを作ってもいいが、前頁に登場したティエリー・ガレさんに習ってここではあえてソースを添えず、サリコルヌの歯ごたえと風味を味わいたい。