
フランス料理は、ポトフとかブッフ・ブルギニョンとか長い時間をかけて煮込む料理が多い。それなら、はじめから倍の量をつくってしまい、残ったものを、翌日とか翌々日にほかの料理に転用するのが、料理上手な主婦(夫)だ。そして、こんなふうに変身をとげた料理が、かえって心待ちにされているのです。
ポトフが残ったら
冷めた肉を薄切りにしてサンドイッチにはさんだり、大皿にコルニション、ゆで卵、ポテトサラダなどをといっしょに盛りつけ、マヨネーズを添えたりすれば、立派な一食になる。ポテの豚肉の残りも同じように転用できる。アシ・パルマンティエhachis parmentier(コラム参照)も、もともとは残り肉を使うもので、ポトフの残り肉を使えば、生の挽き肉からつくるよりはるかにおいしくなる。ミロトン・ド・ブmiroton de boeufもポトフの残りをおいしく食べる一品だ。玉ネギ一個をみじんに切りにし、しばらくバターでいためたら、さっと小麦粉大さじ1杯半を振りかけて混ぜ合わせ、ポトフの残っているブイヨン1カップと濃縮トマト少々を加えて混ぜ合わせる。ここへ大きめに薄切りにしておいた残り肉を加え、グツグツいってきたら、パセリを散らしバターライスを添える。うまい!
ポトフのブイヨンが残っていたらこんなにうれしいことはない。雑炊のダシにしたり、ラーメンのスープに加えたり…。
オニオンスープsoupe à l’oignonだって、ポトフのブイヨンの残りでつくれば本格的な味になる。4人分の量のブイヨンがなかったら、チキンのブイヨンキューブでつくったブイヨンを足せばいい。
ブランケット・ド・ヴォーが残ったら
子牛肉のカレーにすれば拍手かっさいをあびる。というわけで、肉も野菜も倍の量にしてつくっておくのが正解です。残っているブランケットを、鍋の底にくっつかないように、たえず木のへらで混ぜ合わせながら弱火で温めなおす。生クリーム少々を足し、カレー粉かカレーペーストを、好みの辛さになるように加えるだけだ。粉末のクミンやコリアンダー少々振りいれてもいいし、ぼくはハチミツ少々で辛みを柔らかくすることにしている。きざんだパセリやコリアンダーの葉を散らす。
ローストチキンが残ったら
ローストチキンの残りは、皮や骨をのぞいてから、大きめにほぐしてサラダに加えるのが定番。それも、卵黄、レモンのしぼり汁、マスタード、アンチョビーペースト、粉末パルメザン、ニンニク入りのドレッシングで和えれば、「はい、シーザーサラダsalade César!」
残りものに少し手を加えたリサイクル料理はまだまだあるけれど、アイデア次第、ここが料理人の腕の見せどころだ。(真)

Hachis parmentier
残り肉500グラムは、細かくひくよりは、包丁で粗くきざんだ方がうまい。玉ネギ2、3個をみじんに切り、厚鍋にバターをとってしばらくいため、とろみをつけるために小麦粉大さじ1杯をまぶす。もう少々いためてからポトフのスープを1カップ注ぎ、よくかき混ぜながら、弱火で15分ほど火を通す。トマト風味をつけたいならトマトピュレ少々も加え、肉を混ぜ入れる。塩、コショウで味を調え、オーブン皿に敷く。ジャガイモ5、6個でつくっておいたマッシュポテトでおおい、溶かしバターをかけ、粉チーズを振って、200度に合わせて熱くなっているオーブンへ。表面にきれいな焼き色がついたらでき上がり。熱々を味わいたい。大人にも子どもにも大人気の一品で、グリーンサラダをたっぷり添えといい。

Brandade de morue
2月1日号の「ふつわ」で干ダラのかき揚げ(もともとはアクラと呼ばれるカリブ海料理)を紹介したときに、塩出しに時間がかかることにふれた。それなら一度に倍の量を塩出しして、湯がいてほぐし、半量、たとえば400グラムを冷蔵庫に入れておき、翌々日くらい、干ダラのグラタン、ブランダードをつくることにしよう。
フライパンにオリーブ油をたっぷりとり、みじんに切ったニンニク4片、ローリエの葉を加えて弱火にかける。油に香りが移ったところでみじんに切った玉ネギ2個を加え、絶えずかき混ぜながらいためていき、軽く色がつきはじめたら、ローリエをとり出し、ほぐしておいた干ダラを混ぜ入れ、火から下ろす。アシ・パルマンティエのとき同様につくったマッシュポテト、きざんだパセリ適量を加えて、丁寧に混ぜ合わせる。塩味を調え、ナツメグ少々、コショウをひき入れ、オーブン皿にとる。おろしチーズを振りかけ、ところどころにバターをのせて、200度に合わせて熱くなっているオーブンへ。15分から20分くらいで表面にきれいな色がついたらできあがり。熱々を味わいたい。魚ぎらいの人の目も細くなるおいしさだ。これもグリーンサラダを添える。
Purée de pommes de terre
アミドンを多くふくむビンチュbintjeという種類のジャガイモをつかうときめ細かなマッシュポテトになる。皮をむいて切り分け、25分近く塩ゆでにする。パソワールにとって水気を切り、鍋にもどし、マッシャーなどできめ細かく押しつぶし、ジャガイモ500グラムなら、バターを大さじ2、3杯混ぜ込んでからコショウをひき入れ、塩味を調える。バターはこの倍の量を加えてもいいのだが、健康を考えて控えめです。
