パブロ・ピカソの若き後継者たち

土と木、太陽に恵まれた南フランスのヴァロリスは、ローマ時代からの古窯地。ペストで人口が激減した16世紀もイタリアから陶芸職人を含む70家族が移住し、陶芸の伝統を絶やさずに続けた歴史がある。1940年代、この町に現代陶芸の新しいうねりが起こったところにピカソがやってきて、ヴァロリス陶芸は黄金期を迎えた。
ジョルジュ・クレマンソー大通りは、今も陶芸家たちのアトリエが軒を連ねる陶芸ストリート。先駆者たちのスタイルにとらわれず、創作に打ちこむ陶芸家たちの作品を見ようと、アトリエの扉を開けてみた…。


N°20 / Aurore Vienne
オロール・ヴィエンヌさん

昨秋、備前の陶芸家・石田和也氏のプロジェクトのアシスタントとして備前に2ヵ月間滞在。石田氏は自ら採掘する陶石で作品を創り、独自に開発した「螺法(らほう)」の技術で備前焼の新しい世界を開拓する作家だが、彼と交代で窯焚きの番をしながら特別ディナーの器一式を製作した。備前では仕事の後、自分の作品も焼くこともできた。この夏はそれをヴァロリスでの合同展に出品するというから楽しみだ。作品のスタイルだけではなく、電気窯を使って窯焚きの風合いを出す技法の研究なども重ね、土の表情を生かした味わいのある器を創る。
Instagram : aurore_vienne

N°57 MSG Céramique Vallauris
モリーン・スタンジェル=ギヨさん

アンティーブの高校の陶芸科、リモージュ国立高等陶芸学校卒業。レストランとのコラボレーションが多い人気陶芸家。美しい色彩の磁器を創る。
Instagram : msg_ceramique
N°69 Tino Aiello
ティノ・アイエロさん

陶芸一家の7代目。「丸みある、人を元気にする陶器が好き。単に 〈美しい〉より 〈陶器が人に与える見えない何か〉に惹かれます」。工房ではコートダジュールのレストランに納品するテーブルウェアを製作中。空間を華やかに彩るエネルギッシュな造形だ。60-70年代のヴァロリス陶芸を特徴づける 「フラメ」装飾も自分なりにとり入れるヴァロリス陶芸の牽引者。仏ろくろ選手権で優勝した父に次ぎ、団体戦優勝、個人2位の名手。
Instagram : tinoaielloceramiste

N°22 Juliana Jurkovick Garzon
ジュリアナ・ユーコヴィチ=ガルゾンさん

心強かった。
「インスピレーションは地中海とギリシャ神話。そこからイメージした自分なりの 〈青〉色を得るために、土を着色しながら実験を重ね、ようやく気に入る青に至りました」。ブラジル出身。記者から陶芸家を目指し、ヴァロリスへ。「先輩陶芸家たちに暖かく迎えられ、親身になってアドバイスをもらったことに感謝しています」。
Instagram : portaraceramics
Lola Stefani
ロラ・ステファニさん

17歳から陶芸の個人指導を受けヴァロリス陶芸学校へ。昨年、21歳でブランド 「Lola Céramique」を立ち上げ。ろくろで成形した皿に蛾やタマムシを彫った作品は一回見たら記憶に刻まれる。目抜き通りのこのギャラリー兼アトリエは、陶芸学校時代の同級生ジュリアナさんとシェア。
Instagram : lola.ceramique
N°21 Alexis Carpentier
アレクシ・カルパンチエさん

「陶芸は古臭い、と思っていたけれど、絵付けを始めたら面白くなって、従来の陶芸とは違う自分なりのものを創りだせる可能性を感じた」。ストリートアート的なイラストが描かれたスプレー缶は、鋳込みで成型した磁器に細筆で絵を描いたもの。磁器とヒップホップ、タトゥーなど一見異質な世界が彼のアトリエで出会い、融合する。
Instagram : alxscrpntr

Manon Letellier
マノン・ルテリエさん

世界を作品に。
撮影のために手にとったオブジェをよく見ると、ブロッコリーの頭を持った犬。磁器製だ。SF、ポップカルチャーの宇宙を漂い、オリジナル神話を想像したりしながら磁器や白砂岩でハイブリッドな動物やナイキシューズをかたどった塑像作品を創り出す。
Instagram : msg_ceramique
[Info] パリからの行き方
◉国鉄パリ・リヨン駅からカンヌへは5時間半ほど。カンヌ駅前のバス停留所から18番に乗り、Place Cavasse停留所まで30分程度。G.クレマンソー大通りは歩いて1分ほど。
◉ヴァロリス観光局 :
4 av. G.Clemenceau
06220 Vallauris
www.vallaurisgolfejuan-tourisme.fr
