1980年から2000年の間に、相米慎二監督は13本の長編映画を残した。本人は2001年に亡くなったため、活動時期はこの間20年ほど。だが、その作品群は今も強烈な輝きを放つ。黒沢清や濱口竜介監督ら現在のトップ監督も相米作品の魅力に言及し続けるなど、後世への影響は大きい。
『台風クラブ』(1985年)は相米の代表作の一本。フランスでは7月3日より、4Kレストア版が劇場公開される。第1回東京国際映画祭では巨匠ベルナルド・ベルトルッチが絶賛し、栄えあるグランプリに輝いた。本作でも相米のトレードマークの「長回し」が堪能できる。
夜の学校のプールに集う中学生。青春映画になりそうな設定だが、爽やかさはなく、むしろ奇妙な空気が漂う。雨で下着が透けても、仲間が溺れ死にかけても、お構いなしで踊り続けるのだ。こうして木曜夜から始まる学生たちの数日間。嵐が近づけば気圧も変化し、子供たちも緩やかに壊れるのか。不安定な家出娘(工藤夕貴)は東京を目指し、ストーカー化した男子は女子を追い詰める。今だと放送禁止か意味不明なシーンもちらほら。生徒に反発を食らう担任教師の三浦友和も、突然でんぐり返しをしたりといい味を醸し出す。80年代という時代のでたらめさや禍々(まがまが)しさに、思春期の危うさが絡み合う。見る度に新たな解釈に誘われる作品だろう。
昨年ベネチア映画祭では別の相米の秀作『お引越し』(1993年)がクラシック部門に出品され、監督の命日に最優秀修復賞を受賞、その後フランスで劇場公開された。相米作品全体はこれまで2010年にナント三大陸映画祭やパリ・シネマテークで回顧上映が組まれたが、昨今デジタル修復の敷居が下がり、ここにきて発掘が遅れがちな1980〜90年代邦画の劇場公開の波に乗る。映画祭の垣根を越え、より広い映画ファンに届く良い機会だ。(瑞)
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「台風クラブ」の入場券を読者10名様にプレゼント。
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お名前(郵送となりますので、郵便受けに書いてあるお名前をローマ字で)、
ご住所をご記入の上、送信してください。
〆切:7月7日(水)16:00
7月3日(水)は、パリ名画座「Reflet Médicis」にて、特別ソワレ。
19h30:入場券を買うと、キリンビール1缶プレゼント!
20h30:『台風クラブ』4Kレストア版上映開始。
映画館 Reflet Médicis
3 Rue Champollion, 75005 Paris