Cité du vitrail
トロワはステンドグラスの都。
4世紀頃から欧州に誕生したステンドグラスは、フランスでは12世紀から各地のゴシック様式の教会に使われて急速に普及した。仏全国のステンドグラスの半分がオーブ県にあるという(9000㎡)。その中心都市トロワは11世紀から大規模な「シャンパーニュの市」開催によって豊かになり、多くの教会が建てられた。
とくに16世紀からはテキスタイル産業の発展ともに富裕層の寄進で美しいステンドグラスを持った教会が建立された。トロワにはとにかく教会が多い。町最古の聖マドレーヌ教会、そして聖ピエール=聖ポール大聖堂(いずれも13世紀築)などのステンドグラスは見逃せない。
そのステンドグラスの伝統を広く一般に伝えようと、2013年にオテル・デュー・ル・コント(12世紀築の施療院)付属の建物の250㎡に展示室を設置。大改修を経て22年12月17日に同建物本館に1100㎡の展示スペースを持つセンターがオープンした。
ここでは制作法や技術、描かれた絵の意味、ステンドグラスの変遷の説明のほか、12世紀の古い作品から、聖人の代わりにジーンズをはいた若い黒人を描いた現代の作品まで展示。19世紀に修復されたチャペルも美しい。ステンドグラス制作のワークショップも開かれる。
センターでステンドグラスの概要をつかんだら、街に出てみよう。内陣と身廊を区切る繊細な彫刻の施された石造りの内陣仕切り(ジュベ)で有名な聖マドレーヌ教会には、イスラエル王ダビデの父エッサイからイエスまでの家系図を絵にした「エッサイの木(系譜)」(1500年)が鮮やかな色で描かれ、大聖堂には13世紀から19世紀までのスタイルの異なるステンドグラスが内陣から身廊まで壁を埋め尽くしている。
聖ウルバン教会にはカラフルなものに混じってグリザイユ(モノクローム)のステンドグラスもある。他の教会のものと見比べてみるといいだろう。
● Cité du vitrail :
31 quai des Comtes-de-Champagne 10000 Troyes
月:14-19h、火- 金 : 9-19h 土 : 8-18h
日: 10-12h. 入場料:5/4€、26歳未満無料
公式サイト : cite-vitrail.fr/fr
Apothicairerie
18世紀の院内薬局
オテル・デュー・ル・コントはシャンパーニュ伯アンリ1世が12世紀に建て、アウグスチノ修道会が運営した貧者、捨て子、産婦のための施療院。18世紀に現在の姿に再建され、1988年まで病院・ホスピスとして使われた。
この病院内の薬局は1725年につくられたままの状態で保存されている。約250の磁器と319点の絵入りの木の箱が天井まで届く棚に並べられているさまは圧巻だ。薬には植物、動物、鉱物由来のものがあり、磁器にはその名が、箱には絵付きで記されている。箱に描かれた絵は、薬商人ピエール・ポメが1695年に出版した『薬剤全史』をもとに描かれた。薬局は閉鎖され、1976年に一般公開されるようになった。
続きの部屋は1961年まで使われていた調剤室。当時の調度や設備は残っていないが薬を調合する修道女の姿を描いた版画や、18世紀のカルテ棚、乳鉢、天秤、蒸留器など薬をつくるための器具が展示されている。