
本国ノルウェーではベストセラー作家として名高いダーグ・ヨハン・ハウゲルード監督の「オスロ3部作」が、この夏劇場公開へ。ベルリン映画祭でノルウェーに初の金熊賞をもたらした『DREAMS』(7/2公開)を皮切りに、『AMOUR』(7/9公開)、『DESIR』(7/16公開)と順次公開される。一番のお勧めは『DREAMS』だ。
「若草物語」を読み、あるシーンを美しいと思い、「いつか私もこの時間を生きたい」と切望するヨハンネ。そんな夢見心地の女子高生の前に、手作りのセーターを着込んだ褐色の肌の女性教師が現れ、初恋の到来に胸焦がす。揺らぐ思いは日記に赤裸々に綴られてゆく。
清らかな水が流れるようなナレーションで胸の内が語られるが、その瑞々しさと生々しさは、トリュフォーやロメールの映画を思い出させる。やがて書いた日記はヨハンネの祖母と母に読まれ、物語は新たな段階へ。この女三代のそれぞれの見解の違いや、フランクな関係性が面白い。読書と執筆という行為の人生への波及効果とは?
「人はなぜ読み、なぜ書くのか」という根源的な問いも促されるようだ。小説家出身のハウゲルード監督らしいアプローチだろう。
他の2作も同性愛のモチーフを自然体で織り込んだ。『AMOUR』は女性医師とゲイの看護師という医療従事者2人の恋愛観を偏見なしに見つめるドラマ。『DESIR』は煙突掃除夫の男性が、男性との不貞を妻に悪びれず告白し窮地に陥る悲喜劇。『DREAMS』で出てきた精神科医が、『AMOUR』にも登場したりと、「トリコロール三部作」的な遊びもある。やはりバカンスシーズンだし、3作全部を見て、現代人の愛と性の考察に加わることをお勧めしたい。(瑞)
