Tarte aux framboises
ひと昔前、夏のバカンスにオーヴェルニュ山地に出かけたことがある。山道を散歩していたら、あたり一面野生のフランボワーズ!さわるとポトリと落ちそうなくらいに熟している。イチゴに比べると上品な甘さ、独特の味わい、いくら食べてもあきなかったおいしさが、今でもよみがえる。そのフランボワーズが八百屋に並んでいる。3年前に紹介して大好評だった赤い果実のタルトを復習。今回はフランボワーズだけを使います。
まずパイ生地を空焼きする。オーブンの目盛りを180度に合わせて点火。自家製の生地 pâte brisée(コラム参照)を1時間寝かせてから、3ミリくらいの厚さに丸くのばす。バターをぬった直径28センチの型におさめ、はみ出た部分を切りとり、フォークで底をまんべんなくつっつく。クッキングペーパーを型の形に合わせながら少し大きめに切って敷き、生地が盛り上がらないように乾燥白インゲン豆1キロを均等に入れる。この豆、タルトの空焼き専用として保存すれば何度でも使える。これをオーブンで15分ほど焼くと生地の縁に軽く焼き色がついてくる。インゲン豆とペーパーをのぞき、全体に焼き色がつくまでもう5~8分焼き、少し冷めたら型からはずす。
次はカスタードクリーム。鍋に牛乳をとり、バニラビーンズからかき出した黒い種とサヤを入れ、弱火にかける。沸騰したら火から下ろし、サヤはとり出す。卵黄と砂糖をボウルにとり、なめらかになるまで混ぜ合わせ、小麦粉を加えて練り合わせる。ここへ熱い牛乳を少しずつ混ぜ入れる。ふたたび鍋に戻して弱火にかけ、絶えず木のヘラでかき混ぜていき、グツグツッと沸騰したら火から下ろして冷ます。好みでポマード状生クリームcrème épaisse少々を混ぜ入れ、味をまろやかにしてもいいだろう。
パイ皮にカスタードクリームを敷く。フランボワーズを写真のように並べていくのだが、フランボワーズは、洗ったりしたらくずれてしまうし、味も薄くなるのでそのまんまです。最後に粉砂糖sucre glaceを振りかけ薄化粧すれば、ほれぼれするような美しいタルトが完成。(真)
フランボワーズ600g前後、パイ生地(コラム参照)、バター、粉砂糖少々。
カスタードクリーム:牛乳350cc、バニラビーンズ1本、卵黄4個分、砂糖70g、小麦粉30g
Pâte brisée
何度も書いているパイ生地だけれど、今回のレシピは卵や砂糖も入れて、少しサブレ風です。バター120グラムを小皿にとってさいの目に切り、室温に置いて柔らかくする。小麦粉240gを大きめのボウルにとる。真ん中をくぼませ卵黄1個を加えてさっと混ぜ合わせ、バターを加え、指先でそぼろ上になるまで混ぜ合わせたら、水を大さじ5杯ほど加える。指先からはなれるようになるまでこねたら、ボール状にしラップでくるんで冷蔵庫で1時間寝かせる。今回のレシピ、市販の生地を使うのなら、折り込みパイ生地 pâte feuilletéeがいい。
Abaisser la pâte
まず冷蔵庫から生地を出し、しばらく室温に置き、のばしやすい柔らかさになるのを待たなければならない。今回の生地のように卵黄や砂糖が入るとどうしてもくっつきやすいので、ふだんよりも少し固めの方がやりやすい。キッチンのワークトップ、それが狭かったら食卓に小麦粉をさっと振り、生地にも粉を振ってから、麺棒rouleau à pâtisserieやすりこ木を使って厚さが均等になるようにのばしていく。途中まだくっつきやすいようなら、また粉を生地にまぶし、好みの厚さになるまで、急がず慎重に作業。