松谷武判さん(1937-) は1966年に渡仏、その後パリで制作を続ける造形作家だ。50年代から現在までの作品を集めた回顧展がフランスで、しかも国立美術館で開催されるのは今回が初めて。渡仏前、戦後の関西で生まれた前衛芸術運動「具体」の会員になった。具体入会許可の決め手となった、水溶性接着剤をキャンバスの上に乗せ、乾かしながら形を作っていく手法は今も続けている。
白黒の作品のイメージが強いが、鮮やかな色が作り出す形がボリュームを感じさせる、幾何学的な作品も創っている。幾何学的といっても有機的な要素もあり、垂れているような形が、接着剤を流して制作した作品と共通している。紙を黒鉛筆で根気よく塗りつぶしていった作品には数メートルに及ぶものもある。鉛筆で作る黒は金属的で、ところどころが鈍く光っている。接着剤で作った形も鉛筆の黒で覆われている。「黒の画家」とも呼ばれるピエール・スーラージュの漆黒とも違う、雨のような動きのある幽玄な黒だ。(羽)
ポンピドゥ・センター: 9月23日(月)まで。 11-21h、火休 、 14/11€。