産業が牽引したデザインの都、サンテティエンヌ。
ユネスコがフランスで唯一「クリエイティブなデザイン都市」と認定したこの町には、かつて武器工場だった広大な跡地を活用したデザインセンター「シテ・デュ・デザイン Cité du design」がある。今年は5月にそのセンターを中心にデザイン・ビエンナーレが開催され、国立デザインギャラリーもオープン予定。世界でもおそらく最高峰のシルクリボンのコレクションのディスプレイが一新された産業芸術博物館もおすすめだ。サンテティエンヌは産業遺産とデザインの宝庫なのです。(美)
あわせてご覧ください。
【特集】サンテティエンヌで、リボンとデザイン、産業遺産とアートを見てあるく。〈その1〉
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Cité du design(シテ・デュ・デザイン)
デザインは町のソフトパワー。国立デザインギャラリーも近くに完成。
主幹産業のリボンのデザイナーや、猟銃でも美しく装飾する人材を養成するため、サンテティエンヌには1804年に授業料無料の市立美術学校が創設された。その歴史が示すように、この町はデザインとは切っても切れない関係にある。かつての国の武器工場跡に2009年、「シテ・デュ・デザイン(デザインセンター)」が置かれたのも必然のなりゆきだ。
14000㎡の広い敷地には、一般の人も見学できるデザイン展示場、サンテティエンヌ高等美術・デザイン学校(Esadse/前出1804年設立の美術学校を母体とする)とその視聴覚室、マテリアル資料室、研究所、子どもたちがデザインに親しめる 「デザイン小屋 Cabane du design」などが集まっている。そして、Esadseのディレクターによって1998年に始められたのが、2年に一回開催される国際デザイン・ビエンナーレだ。第13回目の今年は5月22日から7月6日。より広く、多くの人々にデザインについて知ってもらうためのイベントがシテ・デュ・デザインを中心に市庁舎、他のミュージアム、屋外でも開催される。
今日のデザインは〈機能的な美しさ〉だけでは済まされない。環境、社会への影響も考えなければいけないし、それは政治、経済的なシステムにも関わってくる。AIがヒトの知性をしのぐ時代のデザインのあり方など、グローバルに考えながらモノを作る、 そんなデザインの実験場なのだ。2010年11月、ユネスコが「デザインに創造的な都市」として、フランスで唯一登録された都市の取り組みだ。ビエンナーレ開催に向け、今は「クリエイティブ地区」大工事中。そこには国立デザイン・ギャラリー(Galerie nationale du design)も誕生し、ますます「シテ」はデザインの中心地として注目されそうだ。
▶ Cité du design – Esadse :
3 rue Javelin Pagnon 42000 Saint-Étienne
Tél : 04.7749.7470
展示は火〜日10h-12h30/13h30-18h.
月休、祭日により閉館。6€/4.50€/26歳未満無料(ガイド付き見学は+2€、75分間)。
トラム T1とT2で、Cité du design下車。
武器工場がデザインセンターに。
サンテティエンヌでは古くから刃物や剣などが作られていて、17世紀には600軒の武具店があったという。17世紀から国の武器を製造し、1765年には王立武器製造所が設立された。フランス革命期はサンテティエンヌではなくArmeville と呼ばれたほど。
これが1885年にManufrance (マニュフランス)となり猟銃や自転車を製造。フランスで最初に通販を始めた会社としても有名だ。Hirondelle(イロンデル)の自転車のほかにも釣具、ミシン、楽器から日用品までカタログ販売。1985年に倒産。今はその建物がデザインセンターとして使われている。
Musée d’art moderne et contemporain
近現代美術館もリニューアルオープン。
黒いタイル張りの大きな建物。なかに入ると、白く、天井の高いホールが広がる。奥に、外観とは対照的な白いタイルを使った現代作家ジャン=ピエール・レイノーの大型作品。このミュージアム開館にあたってレイノーがこの空間のために製作した「Espace Zéro」だ。
同館ができる前は産業芸術博物館が1970年代から、シモン・アンタイ、ピエール・スーラージュ、ベルナール・ヴネ、ゲルハルト・リヒターらフランス、ドイツで活動する作家たちの個展を開催しつつ作品を収集していた。それに加え、フランク・ステラほか米作家の作品購入を皮切りに、アメリカン・アートのコレクションも充実させてきた。産業芸術博物館がスペース不足となり、1987年にこの近現代美術館が創設された。
高さ8メートルの広い壁で、現代作家の大型作品がのびのびと個性と表現を放つ。所蔵品総数は2万点、うち1500点がデザイン作品だ。公式サイトでコレクションを見られるページがあるので開いてみると、ペリアン、プルヴェらの家具からラリックのクリスタルの器ほか、サンテティエンヌの町の写真などもあった。
昨秋、1年半の改修工事を終えて再オープンしたばかり。再出発の展覧会は収蔵品のなかから大型作品ばかりを展示する「HorsFormat(規格外)」展、新しくコレクションに加わった作品を展示する「BRAND NEW!」など豊かな収蔵品が観られる。
サンテティエンヌを!もっと楽しもう
◉ パリからの行き方
パリのリヨン駅から直通TGVで3時間弱〜5時間
半(乗り換えが2回などの場合)。
◉サンテティエンヌと近郊の公共交通博物館
Musée des Transports Urbains de Saint-Etienne et sa Région
サンテティエンヌのトラムウェイは1881年に開通。車社会になり多くの都市がトラムを放棄する中、この町はトラムの改良と近代化を図りつつ絶え間なく走らせ続けてきた。南北を縦断する線は単純明解で観光客でも使いやすい!
博物館はトラムで働いていたボランティアが案内してくれる。
Musée des Transports Urbains de Saint-Etienne et sa Région:
Av. Pierre-Mendès-France 42270 Saint-Priest-en-Jarez
水曜14h-17hのみ開館。 5€/3€
Tél : 07.7160.8239
www.musee-transports42.fr
トラムT1かT3 Hôpital Nord行Parc Champirol下車。
◉常設マルシェHalles Mazerat で買い物&食事!
好きなものを買ってテーブルに座って食べられる
マルシェ。朝から晩までやっているのが嬉しい。
イタリアンでピザや野菜の惣菜、カキ6個11€、
白ワインがグラス5€など。
Halles Mazerat :
2 cours Victor Hugo 42000 Saint Etienne
トラムT1、T3でBourse du Travailか、Saint-Louis下車。
月休、火水: 8h30-21h30、
木–土: 8h30-22h30、日: 9h-15h
◉La petite cantine :
常設マルシェの周辺には、やっぱりおいしいレストランが集まっているようだ。この「小さな食堂」も人気。エスカルゴ、カエルの腿、子牛、牛サーロイン、サラダなど。朝(カフェ)と昼のみ営業。
19 cours Victor Hugo 42000 – Saint-Étienne
(産業芸術博物館前)
前菜+主菜+デザートで19.50€
主菜のみ14.50€。ワイン4.50€。
月〜土 8h-15h、日休。