今年はロシア革命百周年の年。「十月革命」が起きた月に合わせて、パリ19区の共産党本部で革命当時のポスター展が始まった。
1917年2月、サンクト・ペテスルブルクで起きた「二月革命」は皇帝ニコライ2世を退位させ、ロマノフ王朝を崩壊させた。10月に起きた「十月革命」ではレーニン率いるボリシェヴィキが臨時政府をクーデターで倒し、史上初の社会主義国家ソビエトをつくった。
しかし、展覧会はここからではなく、フランスから始まっている。1910年、パリに滞在していたレーニンは、ペール・ラシェーズ墓地の「国民兵の壁」を訪れた。1871年のパリ・コミューンの末期、ペール・ラシェーズで政府軍に銃殺された国民兵に敬意を捧げるためだった。本展では、ペールラシェーズを訪れたレーニンのポスターと、パリ・コミューンのポスターを展示し、パリ市民の自治政府がロシア革命に与えた影響を示している。
10月7日のニュイ・ブランシュのイベントで、ロシア人のアーティスト集団がなぜパリ・コミューンで亡くなった市民の亡骸の写真を拡大してパリ市庁舎前にトーテムのように立てていたかが、この展覧会を見るとよくわかる。
ロシア革命を大きく扱わないパリ美術界とは違い、今年ロンドンでは、ロシア革命百周年の嵐が吹きまくり、デザインミュージアムでロシア革命と建築についての展覧会、ロイヤル・アカデミー・オヴ・アーツで絵画と彫刻を中心に「革命」展が開かれた。前者は、前衛的な建築が次第に硬直化し、権力のプロパガンダに利用される面白みのないものに変化していく様子を、後者はアーティストたちの革命への夢が破れていくさまを絵巻物のように描いていた。
共産党本部で行う展覧会に、そこまでの視点は期待できない。革命を肯定的に扱うのは当然だ。ロンドンの展覧会は知識階級から見たロシア革命だった。この展覧会の中心は、労働者と農民と兵士だ。中心人物が変わると革命の風景も違って見える。食べるものがなくて「助けて」と叫ぶ痩せた農民の体を麦の穂が貫く絵から、貧困が増えている今の時代が重なって見えてくる。
兵士を英雄的に描いたプロパガンダ風ポスターが多いかと思っていたら、それは意外に少なく、漫画風、風刺画風、ひなびた味わいのあるポスターに面白いものがある。「同志レーニンが地球を掃除」は、レーニンが地球から赤いほうきでゴミを払い落とす絵で、ゴミはドイツ皇帝ヴィィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世、ロシア正教の司祭、金貨がつまった袋を持った資本家だ。
外国の資本主義勢力(英米仏)が葉巻をふかす太った男性として皮肉られている絵もある。帝政時代の軍人たちが作った反革命軍との戦闘を描いたポスターには、中世の木版画のような素朴な美しさがある。かわいらしいのは、仏赤十字のポスターをパクった赤ちゃんデモのポスター。赤ちゃんたちがプラカードを持って「母乳ちょうだい」「きれいな空気をちょうだい」と主張している。革命当時は子どもも大変だったのだ。反革命派を駆逐して革命に成功した兵士たちを待ち受けていた次の敵はシラミ!巨大なシラミで恐怖感を与えて、身体の清潔を訴える、こちらもクスリと笑える作品だ。(羽)
11月4日まで。月〜金、10h−18h。
特別イベントのある時を除いて土日休。無料。
講演会と映画は予約要。 http://international.pcf.fr/101974
パリ市の図書館でもロシア革命を記念した展覧会を開催中。
https://quefaire.paris.fr/25532/revolution-russe-1917-2017
Siège du PCF (Parti Communiste Français)
Adresse : 2 Place du Colonel Fabien, Paris , Franceアクセス : Colonel Fabien