改革されるのは「普通バカロレア」
ブランケ教育相が2月14日に閣議提出と同時に公表したバカロレア改革法案にさまざまな議論が巻き起こっている。普通バカロレアがS(理系)、L(文学系)、ES(経済・社会学系)に再編された1995年以来の大改革だ。高校教師やバカロレアを直接担当する人々から、とまどいや反発が起きるのは当然といえば当然だろう。ちなみに、今回の改革の対象となるのは普通バカロレアのみで、技術バカロレア、職業バカロレアは現行のまま。
政府の改革案では、まず現行制度で高2から選ぶS、L、ESコースが廃止される。クラスは高2から、専攻科目の選択に準じて編成されるようになる。共通科目のほかに、高2では3つの専攻科目、高3では2つの専攻科目を生徒は選択する。
共通科目は仏語、哲学、歴史・地理、公民、外国語2つ、体育、新科目でまだ内容のはっきりしない「科学的デジタル・ヒューマニティーズ(コンピューティングを用いた人文科学)」。専攻科目は芸術、環境学/農学、歴史・地理/政治学、文学/哲学/人文科学、外国語・外国文学、数学/情報科学、生物・地学、工学、経済・社会学、物理・化学など。教育相は専攻科目を30くらいに増やすとしているが、全校で可能なのか、そのための教員を確保できるのかという疑問は残る。
現行の普通バカロレアは、高2の終わりに仏語、理科(L、ESのみ)と自由課題(口頭)の試験、3年の終わりには哲学、歴史・地理、外国語2つの共通科目のほか、S、L、ESのコースに応じた選択科目など合計で約10科目の試験が行われる。改革案では、高2の終わりに仏語試験があり、高3の春に専門科目2つの試験(この成績は新たな大学入学振り分け制度Parcoursupにカウントされる)と、6月に哲学と自由課題研究の試験がある。生徒が各自テーマを決めて研究する自由課題の口頭試験は原案では30分とされ反対意見も多かったためか、政府案では従来通りの10分のプレゼンと10分の質疑応答となった。
バカロレア総合の評価は、60%が試験の結果、30%は共通試験
2021年のバカロレア試験から実施
こうした改革は、今年9月に高校に入学する生徒から適用されるため、彼らが受ける2021年のバカロレア試験から変わることになる。教育省が12月末に行った高校生を対象とした世論調査では、79%がバカロレアを改革することには賛成だが、88%が高校によって平常点の評価にばらつきができて不平等になるのではないかと危惧していた。これを受けて、政府案では純粋な平常点の評価割合を、1月の改革原案では4割だったのを、1割に下げる形になったようだ。
大学入学振り分け制度Parcoursupとバカロレア改革に反対する教員労組、大学生・高校生組合の抗議運動が続いているが、抗議の矛先は主にParcoursupにあるようだ。ただし、バカロレア改革は試験科目を変えるだけでなく、高校のカリキュラムも変える。「科学的デジタル・ヒューマニティーズ」といった新科目や、環境学、農学など普通科高校では稀な科目を教える教師の確保も不安材料だろうし、専攻科目が絞られることによって理系科目の授業時間が減ることに理科教員らは不安を抱えている。これまでの政権でも何度も断念されきたバカロレア改革。現政権が敢行できるのかどうか、行方を注視したい。(し)