失業給付改革法案が成立
11月17日に失業給付制度改革法案が国会で最終成立し、2019年の失業給付の改革措置は23年末まで延期されることになった。また、この法案により、政府が景気に応じて給付期間を来年2月から政令で変更することが可能になる。
自主退職者と自由業者にも失業手当を給付するというマクロン大統領の公約を受けて、2019年秋に高給取りの失業手当の減額を含めた失業給付制度改革の政令が発布された。対象となる自主退職者は勤続5年以上で明確な職業転換計画がある人、自由業者は年間売上が1万€で2年以上活動し倒産した人(6ヵ月間、手当月800€)だ。
しかし、コロナ禍のためにその適用は21年4月に延期された。さらに、21年7月には、食品製造、飲食宿泊業、輸送、林業など7つの産業部門において無期雇用や長期有期雇用を促進するため、短期の有期雇用を多用する企業の失業保険料の雇用者負担率を引き上げる措置が開始した(飲食・宿泊業は22年9月から)。
同年10月には失業手当の計算方法が変更された。それまでは働いた期間の日給が給付額のベースだったが、改正後は過去12ヵ月間の平均月収がベースとなった。
この方法だと、芸術分野のアンテルミタンなど不定期労働者や、短期有期雇用を繰り返す労働者に不利になるとして労組が反対し、国務院が6月にこの条項を却下したため、政府は改革による手当減少を43%までに制限することで国務院の承認を得た。同年12月からは、失業手当受給条件が厳しくなり、従来は過去28ヵ月間に4ヵ月働けば失業手当が支給されたが、改革後は24ヵ月間に6ヵ月働くことが条件になった。また、高給取り(月給4500€以上)の失業者の手当は7ヵ月目から30%カットされる措置もスタートした。
この11月に成立した法案により、以上の改革は2023年末まで有効になる。今回の改革では、欠勤を理由とする解雇は自主退職とみなされ失業手当がもらえないことや、有期雇用の人が無期雇用のオファーを1年間に2回拒否すると手当を支給されなくなることが追加された。
さらに、景気と失業率に応じて失業給付期間を政令で変更することが可能になった。21日に政府が明らかにした詳細によると、来年2月以降に求職者登録をした人が対象で、現行では働いた日数分だけ失業手当の給付が受けられ、上限は53歳未満で24ヵ月間、53~54歳なら30ヵ月間、55歳以上なら36ヵ月間だが、2月以降は、好景気で失業率が9%未満で3四半期続いて減る傾向にあるなら給付期間が25%減る(ただし給付期間の下限は6ヵ月)。たとえば、24ヵ月間働いた人の給付期間は24ヵ月でなく18ヵ月になる。逆に景気が悪化し、失業率が9%以上で上昇し続けていれば、給付期間は本来の長さに戻る。失業率が7.3%、かつ製造業、飲食ホテル業界などで人手不足の問題が起きている現在は、給付期間削減の対象になるというわけだ。
労組はこうした一連の改革に反対しており、2024年1月以降の失業給付規則についての労使代表と政府の協議がすでに始まっている。2019年までは年29億€の失業保険制度の赤字が、景気回復により22年には44億€の黒字になると予測されているだけに、労組は改革を巻き返す要求を突き付けてくるだろう。(し)