ジャン=ポール・ドルヴォワ年金制度改革委員が、1年半の労使協議を経て7月18日に政府に改革骨子を提出した。単一制度や、年金の満額受給資格を2025年から64歳にする提案に労組から抗議の声が上がっており、難しい改革になりそうだ。8月から労使協議再開、年末に法案確定、国会審議は来年春、2025年から施行という時間をかけたプロセスが予定されている。
マクロン大統領は2017年に年金制度の一本化、ポイント制導入を公約していた。高齢化と経済低迷で年金の赤字は2022年に100億ユーロに上ると予測されており、政府は赤字解消はもとより「より公平でシンプルでわかりやすい」制度への改革を目指す。
改革の骨子はまず、公務員、会社員、自由業、商人、農業従事者ほか、種々の特別制度(公務員や国鉄職員等)など42の年金制度を一本化し「普遍年金制度」を創設すること。また、保険料を払った四半期数で支給額を算定する現行制度に対し、働いた期間にためたポイントに応じて支給額を算出するポイント制導入だ。ドルヴォワ委員の案では、2025年から1ポイントを0.55ユーロとし、100ユーロの保険料=5.5ユーロの年金+物価スライドとする。公務員は最後の6ヵ月の給与、民間では最良の25年間の給与をベースに年金額を算定するやり方が廃止され、一律全就労期間のポイント計算となるため、公務員をはじめとして、多くの就労者にとって不利になりそうだ。
また、62歳退職の権利は現行のままだが、満額受給資格年齢を64歳に引き上げることで、それより前なら割引、後なら割増となるため長く働くことが奨励される。しかも、この「64歳」は平均寿命に応じて変化していく。ただし、軍人、警官、消防士、看守などは早期の退職が可能で、仕事の「苦痛度」考慮についても今後の労使との協議で詳細が決められる予定だ。逆に、就職が遅かった人、出産・育児で仕事を中断した女性らも新制度なら65〜67歳まで働くことなく、64歳で満額受け取れる利点もある。失業、産休、障害・病気の期間は「連帯ポイント」が加算され弱者に有利と政府は強調。
気になる保険料は一律28.12%に。給与所得者の場合はほぼ変わらないが、かなりな値上げになる自由業者に対しては、控除後の収入を対象にするなどの案があるが、詳細は未定。CFDTは弱者を考慮した側面には賛成だが、満額64歳には全労組が反対、CGTは全面対決の姿勢だ。既存制度を一本化する大改革の詳細が明らかになるにつれ、熱い議論が巻き起こりそうだ。(し)