Ratatouille (ラタトゥイユ)
8月から9月にかけてパリの朝市でも、トマト、赤ピーマン、クルジェット、ナスといった野菜が安くなっているので、ラタトゥイユが作りたくなる。もともとは南仏料理だったのだが、フランス全国に広まったのもナットクの、どこかなつかしいおふくろの味だ。
各家庭にそれぞれのラタトゥイユがある。くたくたになるまで煮て、すべての野菜の風味が一つになったようなものもおいしいけれど、ぼくは、各野菜の風味を生かすことを心がけ、クルジェットとナスは別にいためてから加えることにしている。
トマトは湯むきしてからさいの目に切る。玉ネギは薄切り。クルジェットは細めならそのまま、太かったら二つに切り分け、2センチの厚さに輪切り。ナスはクルジェットと同じくらいの大きさに切る。赤ピーマンは種をとってから小さく切る。ニンニクはみじん切り。タイム、ローリエの葉、パセリをまとめて糸でしばったブーケ・ガルニを用意する。
ココット鍋にオリーブ油を多めにとり、玉ネギを入れ、木のへらで混ぜつつ弱火で3分ほどいためたら、ニンニク、赤ピーマン、トマトを加え、軽く塩、コショウ。水少々、ブーケ・ガルニも加え、ふたをし、ときどき混ぜ合わせながら煮ていく。
フライパンに、オリーブ油をたっぷりとり、ナス、次にクルジェットを軽く色がつくまでいため、トマトと赤ピーマンを煮込んでいるココット鍋に加える。ふたをして、相変わらず弱火で30分ほど火をとおす。ブーケ・ガルニをとり出し、仕上げにオリーブ油を大さじ3杯ほど足し、必要なら塩、コショウで味を調えるのだが、野菜の持ち味を大切にしたいので、塩加減はあくまでもひかえめに。エスプレット産トウガラシ少々を振りかけてもいい。
子羊肉や魚の料理、オムレツなどの付け合せになるし、フツフツいっているところに卵を落として半熟加減にし、とろりと流れ出す黄身とラタトゥイユを混ぜ混ぜしながら食べていると、南仏の友人宅での食事が思い出される。翌日冷たくして食べると残暑がすっとひいていくようだ。(真)
4〜6人分:トマト6個、玉ネギ2個、赤ピーマン2個、クルジェット2、3本、ナス2、3本、ニンニク4片、ブーケ・ガルニ (タイム4枝、ローリエの葉1枚、パセリ6茎)、オリーブ油、塩、コショウ。
*以上の野菜の分量はあくまでも目安。割合を変えながら自分ならではのラタトゥイユを目指しましょう。
Chakchouka (シャクシュカ)
地中海気候に恵まれて栽培されたトマト、赤ピーマン、クルジェット、ナスの凝縮されたようなおいしさ!スペインやイタリア、ギリシャやトルコ、あるいはマグレブ三国(チュニジア、アルジェリア、モロッコ)で、つくり方に多少の違いはあるものの、ラタトゥイユがつくられている。マグレブ圏ではシャクシュカと呼ばれていて、卵を落として味わったりする。
チュニジアレストランには “Complet poisson”という一品があるのだが、グリルしたタイやスズキに、フリット、目玉焼き、そしてシャクシュカが付け合わせになり、そのシャクシュカが魚の味をみごとに引き立てる。
Méchouia(メシュイア)
マグレブ出身の人たちが大好きなサラダが「メシュイア」だ。赤ピーマン2個、緑ピーマン2個、そして中くらいのトマト4個、そしてニンニク6片(皮ごと)を、クッキングシート(硫酸紙)を敷いた天板にのせる。目盛り200度に合わせたオーブンの上段に入れる。トマトとピーマンをときどきひっくり返しながら、まんべんなく焦げ色がつくまで焼いたら、天板をとり出す。
ピーマンとトマトをボウルにとり、大皿できちんとふたをして10分待つ。こうすると、黒こげの皮が簡単にむけてしまう。ニンニクの皮をむき、クリーム状の中身をサラダボウルにとる。ピーマンはへたのところを切りとり、種をのぞき、ざくざくっと切り分け、サラダボウルへ。トマトもへたをのぞき、ピーマン同様に切り分け、サラダボウルに加える。
オリーブ油少々、レモン半個のしぼり汁、塩、コショウで味を調える。オリーブやケッパーを加えてもいい。ぼくは、コリアンダーパウダー少々も混ぜ入れる。赤ピーマンとトマトの甘み、レモンの酸味、それにいぶしたような風味も加わり、極上のサラダ!