ブーゲンビリアの花、 すっきり晴れた青空、朱や黄の建物…強い日差しにコントラストの鮮やかな風景が広がる。コート・ダジュールがなかったら現代美術史は違っていただろうと地元の人々が自慢するほど、この地は芸術家たちに愛された。
マチス、シャガール、ルノワール…。ピカソもそのひとり。1919年に初めて南仏を訪れてから定期的に夏を過ごし、浜に遊び、恋をし、制作を続けた。いくつかの家を買い、1973年、ムージャンに没した。
没後50年にあたる今年は各地で様々な展覧会が企画されているというので、パリからニース、そこからムージャン、ヴァロリス、アンチーブと巨匠ゆかりの町を訪ねた。
古代から陶芸が盛んだったヴァロリスでは、すでに芸術家として大成していたピカソが職人たちとともに陶芸作品を創った。工房の仲間と親交をもっただけでなく名誉市民として迎えられ、町をあげて誕生日を祝ってもらったりもした。ピカソはそのお礼に「羊を抱く男」を市に寄贈し、町の広場に置くよう願ったという。
その彫刻が今も同じ広場に立っている。周囲はマルシェで賑わい、音楽が響き、工房で陶芸家たちが作業していた。芸術家の魂がいまも息づいているようだった。(六)
この特集は3回に分けて掲載します。
(1)ムージャン Mougins
(2)ヴァロリス Vallauris
(3)アンチーブ Antibes
取材と文 : 羽生のり子、編集部
取材協力:Comité Régional de Tourisme -Côte d’Azur France
www.cotedazurfrance.fr