Paris + par Art Basel 2023
1974年以来40年以上にわたり、毎秋パリで開催された国際的な現代アートフェア「F I A C」が2022年に無くなり、突然、スイスのバーゼルを本拠地とする「アート・バーゼル」に取って代わられた。会場のグランパレ・エフェメールに33カ国から154のギャラリーが参加し、世界中からコレクターがやってくる格式高いアートフェアなのだが、コレクターでなくても入場料を払えば誰でも入ることができる。700の候補から選りすぐられたギャラリーがどんな作品を展示するのか、美術愛好家には興味しんしんのフェアだ。
作品の商業的価値や美術市場の状況に関係なく見ていっても、やはりほとんどが著名作家だ。ルイ・ヴィトン財団で始まったマーク・ロスコ展に合わせ、米国を中心に世界7箇所にギャラリーを持つペース・ギャラリーPace Galleryは、ロスコの作品と、ロスコからインスピレーションを得たアーティストたちの作品を並べて展示している。今年パリの「フェスティバル・ドートンヌ」に参加し、2か所で個展を開催するイト・バラーダYto Barradaは、布をキャンバスに貼り付けて意表を突くロスコ風作品を作った。
アール・ブリュットが専門のクリスチャン・ベルストChristian Berst Art Brut(冒頭の写真)では、うつ病になり、息子の勧めで50歳を過ぎて絵を描き始めたチェコ人アンナ・ゼマンコヴァ(1908-1986)の個展。植物を幻想的に描くゼマンコヴァの作品は何度も見てきたが、完成度の高い作品がこれほど結集したのを見たのは初めてだ。10月18日のV I P招待日と19日のオープニングの日で、ほとんどの作品に売却済みの印がついた。
近代美術が専門のロンドンのRichard Nagy ltd.は、線の動きが冴えるエゴン・シーレの人物デッサンを展示。東京のタカ・イシイギャラリーは、「動き」をテーマに、田中敦子など「具体」の作家の作品、英国人美術家ケリス・ウィン・エヴァンスCerith Wyn Evansの白いネオンで足の動きを表現した作品を見せている。
Public Program 2023
Paris + par Art Baselのよいところは、会場参加のギャラリーが提供した作品を、会場外の複数の場所で無料で見ることができる点だ。チュイルリー公園(写真下)では、ルーヴル・ランスの館長アナベル・テネーズをキュレーターに迎え、公園内のあちこちに多くの彫刻やインスタレーションを据えた。作品の説明付きなので、現代美術に馴染みがない人にもとっつきやすい。
フランス学士院 Institut de Franceではパリ在住の米国人彫刻家、シェイラ・ヒックスのテキスタイル彫刻。トロカデロ近くのイエナ宮Palais d’Iénaでは、ダニエル・ビュランとミケランジェロ・ピストレットのインスタレーション(上の写真)。窓につけたビュランの幾何学模様が、ステンドグラスのように美しく床に映る(10月29日まで)。会場外の展示期間は場所によって異なるので、このアートフェアのウェブサイトで確認してから見に行くことを勧めたい。(羽)
会場:Grand Palais Ephémère (以下の地図参照)
会期:10月20日(金)11h-21h
21日(土) 11h-20h
22日(日)11h-19h
入場料 : 一般40€ / 学生と26歳未満、ルーヴル若者、ルーヴル・プロ、ルーヴル家族会員は27€
夜間割引料金30€/ 同伴者付きの12歳未満無料
Grand Palais Éphémère
Adresse : 2 place Joffre , Paris , Franceアクセス : Ecole Militaire
URL : https://parisplus.artbasel.com/