左派4党 「NUPES」共闘で総選挙へ。
6月12、19日の総選挙(国民議会選挙/定数577)に向けて「服従しないフランス」党(LFI)と左派3党が共闘することに合意した。この4党は「環境社会大衆新連合(Nouvelle Union Populaire Ecologique et Sociale = Nupes)」の名の下に統一候補を立てて総選挙に臨む。この共闘は、大統領選第1回投票で22%を獲得したLFIのメランション氏が呼びかけていたもの。5月2日にはLFIがヨーロッパ・エコロジー=緑の党(EELV)と、3日には共産党と、4日には社会党と合意が成った。メランション氏は「歴史的な結集」と称賛。7日にはNupesの初集会が開かれた。
EUに懐疑的なLFIとの協議で、EU推進派のEELVは経済政策、共通農業政策などにおける生産性重視やリベラリズムに対してEU規則に服従しない可能性を認めて合意。共産党とLFIは主に原発推進と原発反対で対立していたが、原発問題については明言せずに合意。最も難航したのは社会党との協議だ。法定最低賃金(SMIC)税引き後1400€、生活必需品の価格凍結、社会党政権下で成立したエルコムリ法(労働時間規制の緩和や解雇を容易にした労働法改正法)廃止、定年退職年齢原則60歳などで合意。EU推進派の社会党もEELVと同様の譲歩を行ない、合意は6日、社会党全国評議会で62%の賛成票で承認された。
だが、オランド前大統領、エロー、カズヌーブ両元首相ら党重鎮をはじめとする反対も多く、全国評議会での議論は紛糾した。大統領選で1.75%の得票率に低迷した社会党にとっては、他に生き残りの道がなかったともいえるだろう。
1区1人の選出となる総選挙には577の選挙区がある。LFIが約330選挙区(現在17議席)、EELVは約100(現在議席ゼロ)、共産党は50~60(現在15)、社会党は70(現在28)から候補を立てると仏紙は報道している。しかし、現職議員が立候補できない選挙区もあり、調整のための話し合いは今後も続きそうだ。
与党も政党連合「ルネッサンス(再生)」で対抗。
一方の与党は、マクロン大統領の共和国前進(LREM)と、政権に参加する中道MoDem、フィリップ前首相が立ち上げたマクロン支持の「オリゾン(地平、展望の意)」が「ルネッサンス(再生) Renaissance」の名の下に総選挙での共闘を5日に発表した。
中道・中道右派を一つの党にまとめたいマクロン大統領の意向を受けて、LREMは今後、党名を「再生」とするとしているが、MoDemやオリゾンは自党の独立を維持する意向。選挙区はLREMに約400、MoDemに100~110、オリゾンに58振り分けられるという。さらに与党は共和党穏健派や、左派共闘に反対する社会党議員を吸収して安定多数を確保しようと目論む。右派の共和党は極右の国民連合(RN)とも与党とも協力しない姿勢を示しているが、「再生」への多少の流出は食い止められないだろう。
7日にマクロン大統領の正式就任式が行われたが、マクロン政権の第2期はどうなるのだろう。前回総選挙のように単独過半数を維持できるのか、あるいは新左派連合(Nupes)が勝利すればメランション氏が首相となってコアビタシオン(保革共存)となるのか…。そうなった場合には政治が混乱すると懸念する向きもあるが、伝統的な右派と左派の政党が弱体化した今、政治的混迷期は避けられないような気がする。(し)