仏領ニューカレドニア(仏名ヌーヴェル・カレドニー)の住民の選挙権を拡大する法改正問題で、首府ヌメアを中心に5月13日から暴動が起き、17日までに5人が死亡した。
ニューカレドニア住民の選挙権を、独立も視野に入れた自治権拡大を認めたヌメア協定(1998年)以前に同地で出生あるいは居住していた人に限定する現行の規定から、居住10年以上の人すべてに拡大する憲法改正案が国民議会に提出され、15日に賛成351票、反対153票で第1読会での可決となった。
フランスによる植民地化以前の先住民、カナック人の割合が1950年代には50%以上だったのが、ニッケル採掘ブームのため70年代からニューカレドニア移住を促進したフランスをはじめとする欧州系やアジア系住民が増え、カナック人は約41%に低下。同地選出の与党議員が民主主義の原則に則って在住10年以上の人に選挙権を与えるべきという憲法改正法案を提出した。与党と右派、極右は賛成し、左派は「服従しないフランス」党(LFI)をはじめとして社会党、エコロジー党らが脱植民地主義プロセスの継続を進めるべきと、200以上の修正案を提出して反対していた。
ニューカレドニアの独立を目指す社会主義カナック解放戦線(FLNKS)は、選挙権規定改定は非カナックの有権者を増やしカナックの声が反映されにくくなる「再植民地化」になると反対しており、法案の撤廃を求めている。
暴動は13日から始まったが、15日の国民議会可決を受けて暴動の激化が懸念され、仏政府は同日に非常事態宣言を発布した。暴動の混乱のなかで17歳の女性、20代と30代の男性2人、憲兵2人の計5人が死亡、数十人が負傷した。治安当局によると、ヌメアで3000~4000人、ヌメア以外で5000人の暴徒がいるとされ、現地の1700人の憲兵ら治安要員に加えて、本土から約1000人が増員派遣された。内務省によると、憲兵64人が負傷、暴徒200人が拘束された。
マクロン大統領は独立派と仏残留派が話し合って何らかの合意に至れば、法案を棚上げにするとしているが、そうでなければ6月末に憲法改正に必要な両院合同議会を招集して採決するとしている。政府は暴徒に対して厳罰で臨む姿勢を明らかにしているほか、暴動を煽るメッセージや動画など外国の介入があるとしてTikTokを16日から同地で禁止にする措置もとっており、言論の自由の侵害との批判もある。暴動の今後の行方が懸念される。(し)
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