Mougins
世界でも稀! 女性芸術家の美術館がムージャンにオープン。
ピカソが最晩年を過ごしたムージャンに、2024年6月、女性アーティスト美術館「FAMM」がオープンした。元は、古代エジプトからピカソを含む現代美術までを集め、2011年に美術コレクターのクリスチャン・ルヴェット氏が設立した「ムージャン古典美術館」だった。その彼が、それまでの展示品を一掃して、印象派から現代作家まで90人の女性美術家の作品を集めた美術館に改装したのだ。女性アーティストに特化した美術館は世界に3館のみ。その一つを見るだけでもムージャンに来る価値はあるだろう。最初の展示室では、ベルト・モリゾ、メアリー・カサットなど、印象派の代表的な女性アーティストの作品が目をひく。昨年のシュルレアリスム100周年記念で新たに注目を浴びたレオノーラ・キャリントン、レオノール・フィニの逸品も並んでいる。1940年代から米国で活躍した抽象画家たちの名品が一堂に見られるのも嬉しい。ピカソの元伴侶フランソワーズ・ジロー、ジャクソン・ポラックの妻リー・クラズナー、ウィレム・デ・クーニングの妻エレン・デ・クーニングのように、有名な夫の影に隠れがちだった優れた女性作家も多く、女性美術家の復権を目指すという美術館の意図が納得できる。
◉FAMM
(Femmes Artistes du Musée de Mougins):
32 rue commandeur 06250 Mougins
https://famm.com Tél:04.9375.1822
10/1-6/20 :10h-18h。12/24と31は10h-16h、
25は休館。16€/64歳以上9€/学生7€/10-17歳5€。
行き方:Cannesから Palm Bus(B、26、28)でMougins Village下車(約40分)、バス停から徒歩15分
Vallarius
ヴァロリスならでは、マニエッリ一大コレクション。
ヴァロリスのマニエッリ陶芸美術館の上階に、フランスで活動したイタリア人美術家、アルベルト・マニエッリ(1888-1971)のコレクションがある。独学で美術を始めたのが19歳の時。その2年後には早くもヴェネチア・ビエンナーレに出展している。そのころの作品「雪」は、大画面に異なるニュアンスの白を平坦に塗った、版画的な作品だ。1914年にパリに出て、カンディンスキー、ピカソ、レジェらと交流、当時の前衛美術の真っ只中にいた。第2次世界大戦中は、南仏グラースにある妻の実家に、ジャン・アルプとゾフィー・トイバー夫妻、ソニア・ドローネーと避難した。マニエッリ・コレクションは、夫の死後、妻が寄付したものだ。後半生は抽象美術家となったが、具象と抽象の間を行ったり来たりした。イラスト的な作品、マチエールの味わいが伝わる作品、日本のほうきを使った抽象画など、画風がよく変わる。一生実験を続けたと言っていいだろう。日本では全く知られていないが、抽象美術の重要なアーティストだ。フランスでは近年、博士論文のテーマにもなった。今後評価が高まるであろうマニエッリの代表作はヴァロリスでなければ見られない。
◉Musée Magnelli – Musée de la céramique
Pl. de la Libération 06220 Vallauris
Tél. : 04.9364.1605
www.vallauris-golfe-juan.fr/20753-le-musee-magnelli-musee-de-la-ceramique.htm
火休、9月16日-6月30日は 10h-12h15/ 14h-17h
入場料:6€/学生、シニアなど3€/18歳以下無料。第1日曜日無料。
Mougins
鋭い視線で世界を語る充実の写真展が続々と。
ムージャンのFAMMのすぐそばにあるのが、古い司祭館を改装した市立現代写真センターだ。ピカソと親しかった写真家の名前を冠したアンドレ・ヴィレール写真美術館を拡張し、レジデンスや個展を通して現代写真を支援する目的で2021年に設立された。2月9日までは、米国のジャーナリスト・映像作家・教育者、バイエテ・ロス・スミスの「見かけを超えて」展。同じ人が服装によってどのように違う印象を与え、主観や思い込みがいかに事実と異なっているかを見る人に突きつける。3月8日からは、現実と非現実の間の一瞬を捉えた写真家として知られる須田一政の「風姿花伝」展が始まる。1976年に日本写真協会新人賞を受賞したシリーズの題名だ。
◉Centre de la photographie de Mougins :
43 rue de l’Église 06250 Mougins
10月-3月 :13h-18h。月火休、6€/学生3€
https://centrephotographiemougins.com