Musée Lumière – リュミエール映画博物館(リヨン)

フランス第二の文化都市リヨンは世界に誇る映画の発祥地。毎年秋には映画遺産の旧作に光を当てた「リュミエール映画祭」が催される。その映画祭を舵取りするアンスティチュ・リュミエールは、普段は博物館とシネマテークを運営している。博物館は映画祭と同様に、撮影兼映写機「シネマトグラフ」を発明したルイとオーギュスト・リュミエール兄弟の名を冠する。2023年末には10ヵ月に及ぶ改修工事を経て再オープンした。
博物館の建物は1899年から1902年にかけて建てられた、兄弟の父アントワーヌの邸宅。6000㎡の敷地内には写真乾板の製造工場や兄弟の家もあった。ルイが弱冠17歳(!)で改良した写真乾板のおかげで事業は繁栄。1895年には敷地内の工場で260人もの工員が働いたという。当時の建物で現存するのは、父親の邸宅と工場の倉庫(Hangar)を改装したシネマテークのみ。この工場の入口こそ、1895年3月19日に、世界最初の映画『(リュミエール)工場の出口』が撮影された場所だ。毎年、リュミエール映画祭の期間中、ここで映画人による『工場の出口』のリメイク撮影会が行われる。2024年は俳優のイザベル・ユペールが自身にとって初の監督作に挑んだ。また、記念すべき3月19日にも、毎年市民が参加できる撮影会が催されている。


リニューアルされた展示室では、映画の誕生とリュミエール家にまつわる歴史を紹介。「映画の特許戦争が終わって久しい1935年、ルイ・リュミエールはウォルト・ディズニーから、映画の父として感謝された」「ルイ・リュミエールは1939年に開催予定だった第一回カンヌ映画祭の審査員を引き受けたが、戦争で中止に」など、興味深い逸話の数々が壁面に投影される。以前の展示方法は、主に個別に資料をタブレットなどで閲覧するスタイルだったが、改修後は、来場者が一緒に見られるものが増えた。これは集団で愉しむ映画文化へのオマージュだという。
シネマトグラフの発明からまもなく、リュミエール兄弟は25人の技師を世界に派遣。イギリスやロシア、エジプト、ベトナム、果ては日本と、遠い異国の風景や文化、事件をフィルムに収めさせた。その時に撮影された膨大かつ貴重な映像は、リュミエール兄弟撮影の作品も加えると全1422本。2005年にはユネスコ世界記憶遺産に指定された。現在はその中の60本がデジタルのフレスコ画となり、博物館内の薄暗い壁に一斉に浮かび上がる。

2023年にリュミエール映画祭で名誉賞を送られたヴィム・ヴェンダース監督は、記者たちの前でリュミエール兄弟が生み出した映像について語った。「これこそが私たちが信頼できる映像。一切の操作や汚染がなく、創造できたことの驚きだけがある……」。映像への信頼が危機的な状況にある時代に、あらためてリュミエール兄弟の映像の意義も立ち上がってくるようだ。
動植物のモチーフが随所に施され優美な博物館の建物。大きな窓からは光(リュミエール)が注ぐ。上階にはリュミエール兄弟の両親の寝室や、リュミエール工場の写真機材などの展示室が続く。心踊る映画史の始まりへの旅を、ゆったりと楽しめる空間となっている。(瑞)



★130年を経て映画館で初公開!リュミエール兄弟の映像 3/19(水)公開に。
アンスティテュ・リュミエールのディレクター、ティエリー・フレモー氏による『Lumière L’aventure continue』は、リュミエール兄弟が遺した50秒の映像作品1500本のうち修復された300作から120作を選び、修復・編集した映像作品。フレモー氏自身のナレーションつき。2017年に公開された「Lumière ! L’aventure commence」の続編となる本作は、『工場の出口』が撮影された1895年3月19日からちょうど130年となる2025年3月19日に公開。日本の映像もふくむ1時間44分の貴重なアーカイブだ。
上映館・時間などの情報はこちらから。

Musée Lumière
Adresse : 25 rue du Premier-Film , 69008 Lyon , FranceTEL : 04.7878.1895
URL : https://www.institut-lumiere.org
火〜日 10h-18h30 9.50€ / 7.50€
