市町村議会選挙の第2回投票(決選投票)の延期措置を盛り込んだ公衆衛生非常事態法が3月22日に国会で最終成立し、同投票は6月に延長されることが決まった。15日に実施された第1回投票の翌日、マクロン大統領が第2回投票の延期を発表していた。
今回の公衆衛生非常事態法により、第1回投票で全議員を選出しなかった市町村議会の第2回投票は6月(日にちは後にデクレで発表)に延期されるが、コロナウイルス感染拡大の状況により、専門家委員会の意見に基づいて政府が5月23日までに選挙実施の是非を明らかにする。
もし6月に実施できない場合は、3月15日の第1回投票は無効になり、新たな市町村議会選挙が実施されることになる。つまり、現時点では第1回投票の結果は有効ということだ。通常なら、すでに選出された議員は直ちに議員職につき、22日までに市町村長を互選するのだが、外出規制の状態では難しいと判断され、フィリップ首相は20日、新たな市町村議会の運営は5月10日以降に延期するとした。それまでは現市町村長、助役などのスタッフが行政を続行する。
投票率はわずか44.66%
16日付ル・モンド紙の報道によると、全市町村の86%(34922市町村のうち30143)が第1回投票で全議員を選出した。一つの候補者リストが50%以上の得票率を挙げた場合、あるいは議員数の少ない村(人口1000人未満)で定員数の議員が過半数の票を獲得したケースだ。手指消毒剤を備えつけ、投票者の間隔を1m以上あけるという異例の措置で臨んだ第1回投票だが、投票率は全国平均で44.66%と、第5共和政(1958年~)の地方選挙で最低を記録した。
エコロジーと極右が健闘
フランス全体としては、ヨーロッパ・エコロジー=緑の党(EELV)と極右の国民連合(RN)が健闘し、与党の共和国前進(LRM)や、共和党、社会党は苦戦。EELVは主要都市を含む122の市町村で第2回投票への進出を決め、前回2014年の21市町村から大きく躍進した。リヨン、グルノーブル、ストラスブール、そして左派と共同リストのマルセイユでトップに立ち、リール、レンヌ、ボルドーなどの都市で2位に付けた。リヨンでは、新人のグレゴリー・ドゥセ候補が率いるEELVリストが28.5%の得票率でトップに立ち、共和党リスト(17%)、市政を長く掌握してきたコロン前内相(LRM)の懐刀ヤン・キュシュラのLRMリスト(14.9%)を大きく引き離した。リヨン・メトロポール議会選に立候補したコロン前内相(72)は立候補した選挙区で22.4%の得票率、弱冠28歳のEELV候補(30.3%)の後塵を拝した。極右RNはフレジュス、ベジエなど6市町村で再選を決め、ペルピニャンなど2市でトップに立った。
パリはイダルゴ現市長がトップに
注目のパリでは、イダルゴ現市長(社会党)が29.3%でトップ、ダティ元法相(共和党)は22.7%、ビュザン前保健相(与党LRM)は17.2%にとどまった。それに続くのがベリアール候補(EELV)10.79%、ヴィラニ候補(元LRM)7.9%、「服従しないフランス」4.6%。ダティ氏はビュザン氏との共闘を拒否しており、イダルゴ氏がEELVらと協力することになれば第2回投票で勝つ可能性は大いにある。一方、ビュザン候補はコロナ感染拡大を理由に選挙運動を止めると宣言。候補を降りたとは明言していないが、戦意喪失の感は否めない。
25年間市政を独占した右派ゴダン市長の空席を狙うマルセイユでは、ゴダンの後継者であるマルティーヌ・ヴァサル氏(共和党 / 22.3%)が僅少差であるがミシェル・リュビロラ候補(元EELVで左派 / 23.4%)にトップを譲った(RN候補は3位の19.5%)。他党との連携交渉次第で行方はわからないが、住宅ビルの崩壊事故などで批判された右派市政からの決別に向かう流れが見てとれる。
閣僚では、ダルマナン会計相が60.9%(北部トゥルコワン)、リステール文化相が58.6%(パリ郊外クロミエ)など5人が第1回投票で当選を決めた。しかし、フィリップ首相は得票率43.6%でトップに立ったものの、第2回投票で左派とEELVの共闘があれば当選は危うい。シアッパ男女平等担当相がパリ14区で相乗りした中道リストは共和党に次ぐ2位(15.7%)と振るわず、ジェバリ運輸担当相はリモージュで落選と、政府への不満が閣僚やLRM候補の苦戦に結びついているようだ。コロナ危機の不安のなかで影が薄れた市議会選挙。国民の心が選挙にはないことだけは確かだ。(し)