沖縄の彫刻家金城実氏の作品が昨年、イナルコ(国立東洋語文化学院)に寄贈され、その一部が、イナルコ <研究の家> で9月23日から常設展示されることとなった。1992年にパリの文化施設 <エスパス・ジャポン> で開催された個展に出品された一部で、寄贈された作品はテラコッタによる6点の野仏と、20点のお面から構成されている。
金城実氏は、1980年代にシリーズで創った『吟遊詩人』群が沖縄の魂の結晶と評された特異な風貌の人物像でも有名だが、沖縄ではアンガージュマン(政治的関与)の芸術家としても名高い。氏のアトリエは、全国からやってくる平和運動、社会運動の活動家の交流の場となっている。住民と一体となって共同制作を行い、とりわけ、『戦争と人間』『チリチリガマ世代を結ぶ平和の像』は有名。後者は右翼によって破壊され、スキャンダルとなった。
沖縄民衆の苦悩と悲しみと苦渋に満ちた笑いなどが、イナルコ・コレクションとなったお面や野仏の表情にも窺える。氏の作品は、沖縄の敗戦後の歴史と切り離して見ることはできない。
作品は一般公開されるものではないが、同館での討論会やシンポジウムなどに参加する一般市民たちには、これらの作品を鑑賞する機会が得られる。日本や沖縄研究者にとって、特異な光を放つ金城作品が、この研究センターに彩りを添えることだろう。(Kolin)