6月12、19日の総選挙(国民議会議員選挙/定数577)で、第2期目に入ったマクロン政権の与党連合「共に(Ensemble)」と、新たな左派連合「Nupes」がどれだけの議席を分け合うかが注目されている。
左派新連合は、大統領選第1回投票で22%を獲得した「服従しないフランス」党(LFI)のメランション氏が呼びかけ、LFIを中心にヨーロッパ・エコロジー=緑の党(EELV)、共産党、社会党が総選挙で共闘することに合意し5月4日に成立した「環境社会大衆新連合(Nupes)」。あわよくば国民議会で過半数をとって政府を掌握、だめでも最大野党勢力としてマクロン政権を牽制しようと目論む。
Nupesは19日に650項目からなる公約を発表した。法定最低賃金を手取り1500€、40年の年金保険料納付で60歳定年・満額年金、富裕税の復活、生活必需品のTVA減率などを掲げている。エネルギー政策では再生可能エネルギー100%への移行を目指し将来は原発廃止という方針でまとまったが、原発維持を主張する共産党に考慮してか、具体的な時期は明示されていない。EUに懐疑的なLFIと、EU推進派のEELV、社会党の調整は微妙で、環境保護、公共サービス維持などに反するEU規則には「抵抗する」可能性のみを提示した。
2017年にマクロンが選出されるまで左派のメイン政党であり続けてきた社会党では、左派新連合への反発が強く、400人の反対派候補が社会党公認リストから外された。右派の主要政党としてやってきた共和党のほうも、大統領選の手痛い敗退が響いてか、与党連合へやや流出。連帯相として入閣した、国民議会共和党会派ダミアン・アバド会長の離党はその典型例だ。共和党の危機とは反対に、極右の国民連合(RN)は大統領選の勢いで、同じ極右のゼムール派との共闘を拒みつつ(地方によっては水面下の交渉もある)躍進を目指す。
新内閣からはボルヌ首相をはじめダルマナン内相ら15人が総選挙に出馬し、17年と同様に、落選すれば辞任だ。ボーヌ欧州問題担当相が初の出馬になるほか、ドモンシャラン環境相は2期目、強姦疑惑で騒がれたアバド連帯相は3期目の出馬。
Ipsosの世論調査では、得票率は与党連合が28%、Nupes27%、RN21%(ゼムール派入れて27%)という三つ巴の結果が出ている。だが議席数では、与党連合が290〜330議席(現346)、Nupesが165~195議席(同およそ60)、共和党系が35~65議席(同121)、RNが20~45議席(同6)と、共和党の地位をNupesが完全に奪う形になる予想だ。蓋を開けてみないとわからないが、Nupesがどこまで躍進するか…。(し)