トロカデロの丘の上、シャイヨー宮内の国立海軍博物館が6年間の修復を経て11月にオープンした。「海の旅」をイメージした新しい内装のなか、当館ご自慢の宝物は修復によって息を吹き込まれた。また、今日ならではの視点から海を考察する新しい展示コーナーも多く設けられた。
ルイ15世の船の模型コレクションを中心に構成されてきた博物館とあって、展示冒頭には大戦艦の模型が鎮座する(下)。実際に千人以上の海兵を乗せていたという 「Royal Louis」は、模型 とはいえ高さ4.5m、長さ5mというビッグサイズ。本物と同じように帆を広げられ、3階建ての船体内の部屋の扉も開閉可能、大砲も100門ほど配備され、将校の教育に使われたものだ。ひっくり返して船底を見ることもでき、船舶エンジニアや大工の勉強にも使われたという。地下には17世紀、ルイ13世の宰相リシュリューがフランス海軍を創設した当時の帆船模型から、産業革命期の蒸気船、今日の原子力空母シャルル・ド・ゴールの泉質まで、フランスの海洋戦略を支えた戦艦の変遷も見られる。
とはいえ、新しい展示スペースには、海に関する今日的な視点をふまえ、漁業、エネルギー開発、マリンスポーツ、植民地と奴隷貿易、捕鯨など幅広いテーマが盛りこまれ、”海軍”より、海洋博物館とよびたいところだ。
「遭難」に関する展示もある。植物学者はじめ17人の科学者を乗せてブレストを出航した探検家ラ・ペルーズ (宗谷海峡=ラ・ペルーズ海峡の名の由来となった人)の船がオーストラリアを経由後、1788年に行方不明になったが、船に積んでいたものが1826年から発見され始めた。植物の籠、動物、食器、銅貨などが再現され、陳列されている。また、船が呑み込まれそうな荒波のなかを航行する擬似体験ができる装置なども最新ミュージアムらしい。事故が多かった昔、漁師がお守りとしたニンニク(香りつき!)ほか、海にまつわる迷信などにも触れている。
パリの他に、今も海軍造船所があるブレスト、ポール・ルイ、ロシュフォール、トゥーロンに海軍博物館が、セーヌ・サン・ドニ県には博物館図書館と収蔵庫が置かれている。さすがは領海面積世界2位のフランスだ。(六)
ほか、海軍博物館の見どころ!
● 船首像
船首に付ける船を象徴する船首像。ナポレオン、アンリ4世、立派なヒゲのガリア人などの船首像はなんとも勇ましい。ルイ14世の船の飾り(写真中ナポレオンの背後)は金箔が施され、ヴェルサイユ宮殿を思わせる。(冒頭の写真)
● 博物館の「香」
このところ香りを使う展覧会が多くなった。ここでも入口付近に「海」のイメージでデザインされた香りがほのかに漂う。
● Peindre pour le roi
海洋画家ジョゼフ・ヴェルネがルイ15世の命で10年間かけて描いた一連のフランス港シリーズはミュージアムの宝だ。
⚫︎ 家族で全員楽しく、バリアフリーも最先端。
3〜6歳なら見学キットが入ったマリンバッグが入口でもらえるが、なんと、0〜3歳向けツアーもある。ガイドさんの童話や歌を聴きながら展示品を触るなど感覚を刺激する見学を親子で楽しめる。
障害者とともに開発したというバリアフリー設備やサービスも注目だ。商業施設では導入が進んでいる感覚過敏者、高齢者、知的障害者のための音や照明を抑えた時間帯”scénographie adoucie”を導入。館入口では防音ヘッドホン、サングラス、杖も借りられ、La Bull(ラ・ビュル)という休憩室を設けた。また点字表示、さわれる展示品、スマホを使う音声ガイド。FALC(わかりやすいフランス語)の説明で見学できるなど徹底している。
Le musée national de la Marine Palais de Chaillot
Adresse : 17 pl. du Trocadéro, 75016 Paris , FranceTEL : 01.5365.6948
アクセス : Trocadéro
URL : https://www.musee-marine.fr
火休、11h–19h(木-22h)。12/31と元旦休館。 常設展+特別展14€(窓口15€) /10€(11€) 常設展のみ11€(窓口12€) /9€(10€)